誰も教えてくれない「企業研究のやり方」

誰も教えてくれない「企業研究のやり方」

就職活動に欠かせない準備のひとつに、「企業研究」があります。エントリーする企業のことをどこまで知っているかは、採用の結果に大きく影響します。採用担当者の立場になれば、「下調べができていない=意欲がない」と捉えてしまうのは仕方のないことです。

しかしこの企業研究に対して、
「具体的に何をすればいいのか?」
「限られた時間の中でどこまでやればいいの?」
「そもそも本当に必要なの?」
という疑問を持っている方も多いでしょう。

そこで今回は、「なぜ必要なのか」「何をすればいいのか」「どこまでやればいいのか」という3つの疑問にお答えしていきます。

なぜ企業研究が必要なのか?

企業研究が必要なのは、入社後のミスマッチを防ぐためです。憧れの企業に入社しても「こんなはずじゃなかった……」と悩みたくはないですし、残念な気持ちで退職することなど考えたくもないですよね。実際にはどんな仕事をするのか、働く環境はどうか、イメージと現実のギャップに苦しむことを避けるためのもの。それが企業研究です。

当然、企業側も同じことを考えています。せっかく採用しても、わずか数年で退職されては元も子もありません。しかも時間をかけて育てた社員がライバル企業に移籍するとなれば、技術や内部情報まで奪われることにもなります。その損失は計り知れません。だからこそ、企業研修の成果には厳しいチェックを入れるのです。問題なのは、知らないこと、調べていないことではありません。ミスマッチの可能性が無いと判断できないことなのです。

就職活動の準備として自己分析に多くの時間をかける方もいますが、優先すべきは企業研究です。というより、企業研究を進めることで、志望動機や仕事選びの基準、優先順位などは自ずと明確になります。 企業研究を「採用に近づくためのプロセス」として捉えると、自分の軸がぶれます。そしてその「ぶれ」は、採用担当者に一瞬で見抜かれるものです。あくまで自分のため、ミスマッチを回避するためと認識していれば、選ぶべき企業も絞られてきます。

企業研究で得るべき3つのこと

ここからは、「具体的に何をすればいいのか?」について考えていきます。

結論からいきますが、企業研究で得るべきものは「経営理念」・「業界における位置付け」・「自分の役割」の3つです。順に見ていきましょう。

経営理念

これは企業が大切にしているもの、価値観です。まずはホームページなどで確認してみてください。なかには企業理念やビジョン、コンセプトといったように表現が違うものもありますが、要するにその企業の「核」となる考え方です。

例えば商品を開発するにも、顧客を第一とするのか、それとも技術の向上に情熱をそそぐのかでは、プロセスも結果も違ってくるでしょう。どちらも重要なことですが、大切なのは「あなたの考え方に近いのはどちらか」ということです。

人間関係と同じで、考え方が合うか、合わないかで付き合いの長さも深さも変わってきます。目指す方向性が同じであれば、少しぐらい表現やプロセスが違っても不平や不満にはなりません。むしろ、その違いがお互いをフォローする力と捉えることができます。

企業研究で真っ先に得るべきは、相手が大切にしているもの、「理念」です。

業界における位置付け

そして「業界における位置付け」も重要なポイントです。これはリーディングカンパニーだとか、急成長の企業などという表面的な意味ではありません。知っておきたいのは、なぜリーディングカンパニーとなることができたのか、どのようにして急成長を遂げたのかという本質です。

ビジネスは競争社会です。勝者がいれば、敗者も存在します。単に売上規模だけではなく、技術力では勝てないが販売力は業界1位、あるいは顧客数では劣るけれどリピート率は負けない、といった部分的な要素もあるでしょう。

そうしたことも含めて業界でのポジションを把握できれば、その企業の魅力や課題が見えてきます。それがそのまま志望動機につながるのは、言うまでもありません。

自分の役割

大量生産、大量消費の時代が終わった今、企業が求めているのは「受動型」ではなく「能動型」の人材です。つまり与えられた仕事をこなすのではなく、積極的に関わる姿勢が必要とされているのです。

入社後のギャップでよくあるのが「思っていた仕事と違った」というもの。例えばメーカーに就職したのに管理部門に配属された、化粧品業界に入ったのに資材調達の部署へ配置された、といったケースがあります。

不満を口にする気持ちは分かりますが、これは企業研究が足りなかったことの結果です。メーカーは、ただ製品を作っているだけではありません。よりよい製品にするための資材開発、生産には下請け企業とのやり取りも必要です。売るための戦略を立てる部署、設備や従業員を管理する人材も欠かせません。技術や製造過程そのものは、メーカーの一面に過ぎないのです。

経営理念を理解し、業界での位置付けを知り、その上で自分に何ができるか。考えるべきは表面的な役割ではなく、同じ方向に進みたいという意思表示、覚悟です。

企業研究のゴールはどこ?

とはいえ、就職活動は第一志望の企業のみ、とうわけにもいきません。実際には、複数の企業に対して進めることになるでしょう。すると、限られた時間の中で「どこまでやればいいのか」、という問題が出てきます。対象の企業が多ければ多いほど、区切りをつけるタイミングも難しくなるものですが、そんなときは原点に立ち返ると答えが見えてきます。

つまり、企業研究の目的を達成すればゴールと考えるのです。

企業選びの基準や志望動機と照らし合わせて、ミスマッチの可能性がないと言えるか。経営理念に共感し、業界での立ち位置も把握した上で、同じ方向に進みたい、そこで仕事がしたいと感じられるかどうか。そうしたことが判断できれば、そこがゴールです。

これは企業研究に限った話ではありませんが、目的が明確であれば、ゴールは見えます。いつまでもゴールにたどり着かないようなら目的が定まっていない、あるいはぶれている証拠です。

「どこまでやればいいのか……」

と思ったら、まずは目的を見直してください。答えは、そこにあります。

企業研究は、入社後のミスマッチを防ぐために必要であると認識すること。経営理念や業界でのポジションを理解し、そこで仕事がしたいと感じられること。それができれば、企業研究も実を結ぶことになるでしょう。