選ばれる企業の「採用ブランディング」

あなたは、どこにでもある数千円のバッグと、ブランド物のバッグの違いについて考えたことがあるでしょうか?気軽に買えるのはどちらで、多くの女性が憧れるのはどちらでしょうか。どちらを選ぶかは、買い手の求めているものによって変わってきます。

その差は「ブランディング」によって生まれています。ブランド物のバッグを選ぶとき、人はバッグそのものではなく、「そのブランドの信頼」を買っているのです。

さて、ここで考えたいのは、この「ブランディング」という手法を採用活動に使えないか、ということです。多くの人に支持されるように、魅力について知ってもらうという点で、顧客の獲得と採用活動の本質は同じと言えます。だとすれば、私たちがアピールするべきことは何でしょうか。どういったアプローチが有効なのでしょうか。

採用ブランディングとは?

商品を売ろうとすれば、必ず価格競争になります。しかし信頼を得ることに力を注げば、結果は違ってきます。ブランディングとはつまり、商品ではなく信頼を売ることです。そして「信頼を売る」とは、相手への理解を示して共感を得ることに他なりません。

「この会社は私のことを理解してくれるし、大事にしてくれる」 そう感じた会社のファンが一人、また一人と増えていき、そのさまを見てまた人が集まる。これがブランディングのスタート地点です。

「うちの会社は業界のリーディングカンパニーで……」

「他社にはない福利厚生が……」

「高い技術力を示す数々の特許が……」

そんな風に会社をアピールすれば、より安定した会社はどこか、もっといい待遇の会社はないかという価格競争にしかなりません。

相手のニーズを引き出し、理解し、提案し、相手の共感を得て「ここで働きたい」と感じさせることが、採用ブランディングといえます。

ブランドを確立させる3つのステップ

くり返しになりますが、顧客の獲得と採用活動の本質は同じで、「商品を売る」のではなく「ファンを増やす」ことです。

ターゲットを明確にし、就活生と会社を結ぶメッセージを見つけ、そのメッセージが届くメディアを選ぶ。この3つができれば、求めている人材を集めることができます。

ターゲットの明確化

まずはターゲットである「求めている人材」を明確にします。ここで注意したいのは、幅を持たせないことです。会社に必要なのは、どんなスキルを持っていて、どんな条件を良しとしている人なのかをはっきりと示すことが重要です。例えば、「本を読むことが好き」で「文章の速読が得意」で「新しいニュースにいつもアンテナを張っている」人という条件があったとしましょう。その条件を見れば、まさに該当している人が興味を持つことになります。実際の業務にそういった内容のものが発生すると想定するからです。事前に明確に条件を伝えておくことで、求めている人材に「自分のことだ」と感じさせることが、ターゲットを絞ることのメリットです。

就活生と会社を結ぶメッセージを探す

ターゲットが明確になったら、次は会社とターゲットを結びつけるメッセージを探します。「つくる」のではなく「探す」というのがポイントです。

仮に、結婚してからも長く仕事を続けたいと考える女性をターゲットにして、「女性社員も多く、働きやすい職場です」とアピールしたらどうなるでしょう。確かに、女性が多いのは安心材料のひとつになるかもしれません。ですが、「長く働く」のとは別の話です。

では、「結婚して、子育てがひと段落してから職場に復帰した先輩もたくさんいますよ。2年後には、託児所の設置も予定しています」とメッセージを変えたらどうなるでしょう。新卒世代の女性がすぐに結婚を意識するかはともかく、「結婚しても仕事は続けたい」と思っている方には響くはずです。

何をアピールするかではなく、相手の不安や悩みに対する理解と提案。それが就活生と会社を結びつけるメッセージです。

メッセージを届けられるメディアの特定

ターゲットと伝えるメッセージが決まれば、あとはそれを届けるだけです。ただし伝達手段を間違えては、何も届きません。ここでも大事なのが、視点を相手に移すことです。「どうやってメッセージを届けるか」ではなく、「相手はどこから情報を得ているか」と考えるのです。

採用活動にSNSを利用する企業も増えてきましたが、それは就活生がスマートフォンを使い、SNSを使って就職活動をしているからです。

ターゲットが明確であれば、そのターゲットの興味・関心のあるものやよく使用するツール、よく行く場所に対して伝えるべきメッセージを選んで届けるだけなのです。

一見釣りや狩りと同じようなプロセスですが、採用活動にも有効です。

多くの企業が見落とす「ブランディングの罠」

求める人材を集めるのに効果的な採用ブランディングですが、多くの企業が見落とす「罠」も潜んでいます。これに気付かないままだと逆効果で、当然、採用の成果にも大きく影響します。

採用ブランディングに潜む危険な罠とは、まずメッセージに一貫性がなくなることです。たとえば女性をターゲットに「ワークライフバランス」をアピールする一方で、やりがいを求める男性に「時には仕事が深夜に及ぶこともあるが、達成感を味わえる」と伝えた場合、捉え方によっては相反する二つのメッセージとなります。それを目にしたとき、あなたならどう感じるでしょうか。一貫性のないメッセージで、信頼を得ることなど不可能です。

さらに厄介なのは、こうした一貫性の欠如が自分たちの知らないところで起こり得るという点です。ホームページやパンフレットなどの制作を外部に依頼した際、メッセージが誇張もしくは誤解されて伝わることも考えられます。

「世界にも通用する技術」と伝えたつもりが「世界で使われている技術」と表現されたらどうなるでしょう。実際には海外展開の予定がなくても、海外での仕事に興味を持つ人が応募してきたら、どう対応すればいいのでしょうか。わずかな誤解が、風評被害に及ばないとも限りません。メッセージの一貫性をどう管理するかは、採用ブランディングを進める上で最も注意すべき点と言えます。

会社そのものではなく、信頼を売る意識を持つこと。ターゲットを明確にし、お互いを結びつけるメッセージを探し、相手に届くメディアに乗せること。会社を売り込むのではなく、ファンを増やすこと。あとはメッセージの一貫性さえ失わなければ、きっと求めている人材の採用につながるでしょう。

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