音楽は心の医療。ピアノの設計者として、いつまでも音に触れていたい。

音楽は心の医療。ピアノの設計者として、いつまでも音に触れていたい。

このストーリーのポイント

  • ヤマハ音楽教室などを通じ、子供の頃から音楽に触れて育つ
  • 学生時代は機械を学び、医療機器の研究に携わる
  • 志望していたアコースティック楽器の設計を担当、ものづくりの喜びを実感

幼い頃からずっと音楽はそばにあった。どんなときでも音楽を聴けば前を向くことができたし、元気になれた。そんな音楽を仕事にできることは幸せだし、これからもずっと音楽と一緒にいたいと思う。“ピアノの設計”というスペシャルな仕事を通じて、鈴木 砂良はそんな喜びを噛みしめている。

-profile-

鈴木 砂良

ヤマハ株式会社

楽器事業本部 ピアノ事業部 ピアノ開発部 ピアノ開発グループ
2017年入社/創造理工学研究科総合機械工学専攻修了

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千葉県出身。幼い頃から音楽に親しみ、今も会社でバンド活動をしている。学生時代は機械を専攻。「ものづくりと音楽」という切り口で見つけたのがヤマハだった。好きな音楽の世界で、機械専攻という自分の強みを活かして活躍する。

ものづくりの世界へ、理系女子として飛び込む

私と音楽の関わりは、幼稚園時代に通ったヤマハ音楽教室からスタートしました。エレクトーンを習い、ピアノを教わって、小学校卒業まで続けました。中学では吹奏楽部に入ってクラリネットを担当、高校では1年だけでしたがやはり吹奏楽部でトランペットを吹きました。
さらに大学では軽音楽部に入り、ロックバンドを結成しました。担当はボーカルです。年齢も性別も価値観も違う人たちが、音楽という共通項で一緒になり、力を合わせて納得できるサウンドをつくっていく。バンドならではのそんな醍醐味を味わいました。

一方で勉強にもかなり打ち込みました。
特に苦しかったのは、大学受験の時です。理系か文系かを決める際、私はあえて苦手な理系を選択したからです。理由は、理系で活躍する女性の姿に憧れたから。当時はまだ“リケジョ”という言葉はなかったものの、理系の女子はかっこいいと思ったのです。その思いだけで必死で授業に食らいつき、勉強を重ねました。
「苦手だけれど何とかなるだろう」と思っていたら何とかなったわけで、自分で目標を決めたらがむしゃらに頑張れるのは私の持ち味かもしれません。いま振り返るとそれは楽器の練習にも通じることでした。

専攻は機械系で、大学院で取り組んだのは、医療機器の研究でした。カタチのあるものづくりがしたかったからです。人工腎臓の血流の流れを研究したり、血流停滞部の血栓形成メカニズムを解き明かしたり。研究は大変だったけれど、データを積み上げていって正しく分析できたときは、大きな達成感が得られました。また学会で発表する機会もあり、緊張感の中、大勢のドクターを前に発表を終えた時の達成感も覚えています。いい経験ができました。

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想像もしなかった、楽器の設計という仕事

医療機器の研究経験を活かし、その道へ進むという選択肢もありましたが、私は、自身の趣味や嗜好と絡めた仕事ができたら、より楽しく仕事ができ、長く続けていけるのではないかと思いました。そんなときに出会ったのが、大学の合同企業説明会に参加していたヤマハ。子供の頃に通っていたヤマハ音楽教室を思い出しながら、説明を聞くことにしました。

ヤマハの説明を聞いて驚いたのが、楽器の設計をする仕事がある、ということでした。スピーカーやヘッドホンを設計するというのは、イメージできます。でも楽器とはただありのままにそこにあるのが当たり前で、設計するなんて考えたこともありませんでした。私が小さい時から触れて来た大好きな楽器の設計ということで一気に惹きこまれ、絶対この仕事がしたいと、その場で決心したのです。
技術系の学生向けに浜松本社で行われた説明会にも参加し、そこで接した社員の方々の温かさ、飾り気のない人柄にも惹かれました。「ぜひ入社して欲しい、一緒に頑張ろう」という言葉は嬉しかったです。

もちろん設計という仕事には、機械を学んできた専門性が発揮できると考えました。流体力学には精通していますし、機械の機構も理解でき、CADのスキルもあります。こうした私の強みを好きな音楽の分野で活かせる、つまり「機械×音楽」という切り口で楽しく長く続けられると思ったのが、ヤマハでの仕事でした。

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試作を繰り返して微妙な音の違いを探る

2017年に入社し、配属されたのが現在のピアノ開発部。アコースティック楽器の設計をしたいという思いをくみ取っていただけてとても嬉しい反面、プレッシャーも大きかったです。なにしろピアノといえば、誰もが認めるヤマハの花形楽器。その設計を担当するなんて、改めて考えてみればとても重大なことです。誇らしさと重圧の両方を感じながらの社会人スタートとなりました。

ピアノという楽器には多くの部品が使われています。しかも木材を中心とした天然素材がふんだんに使われています。そのため素材の違いやばらつき、部品の形状だけでなく、塗料や接着剤、整音の具合などによって音が変わってしまう、非常にデリケートな楽器です。そこで響板やフレーム、弦などの部品を設計し、試作を重ねて微妙な設計の違いによって音がどう変化するかを確かめる必要があります。
私は1年目から部品の試作に携わることができました。最初に担当したのが、弦の振動を響板に伝える「駒」。図面を描いたら、本社浜松から掛川市にある工場に出向いて、職人さんに試作を依頼します。職人さんに早く顔を覚えてもらうのも大切なことなので、現場でのコミュニケーションも欠かさないようにしました。ほんの少しの設計の違いでピアノの音が丸くなったり、華やかになったり。経験豊富な職人さんたちの言葉に耳を傾けながらそんな変化を確かめるのは、とても楽しいことでした。
一方で私は人見知りするタイプなので、職人さんとのコミュニケーションがうまく取れるか心配でした。でも職人さんは、優しい人ばかり。すぐに打ち解けることができ、心配は杞憂に終わりました。

印象に残っているのは、ピアノの不調を解決できたことです。弦の振動が正しく駒に伝わらず、ノイズが発生することが問題になっていたピアノでした。私は響板や駒など、関連する部品を計測して微妙な仕様変更を重ね、工場のラインにつきっきりとなって、試作を繰り返しました。約2ヵ月はかかったと思います。
やっと問題が解消されてノイズが消えたときは大きな達成感があり、現場で確認後、事務所に戻ってきて歓声を上げてしまったほどでした。そのピアノは商品として販売され、今は誰かが弾いてくれているでしょう。大きな問題を解決することができ、私自身の設計者としての成長を実感しました。

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これからもずっと音楽と一緒にいたい

ピアノの音は、その素材や材料の違い、接着剤や塗料などの違い、ハンマーの整音具合などに大きく影響を受けます。また、部品の形状も音の違いに影響を与えますし、もちろん、演奏者によっても変わります。ピアノにもそれぞれ“個性”があって、音色として異なるため、それぞれの“得意な曲”があるのだと思っています。本当にデリケートで、そしてどんなに完璧につくられたとしても100点満点はあり得ない楽器です。この奥の深さが大きな魅力です。
これは木を材料に使っていることによるもので、機械との大きな違いでしょう。1台1台データを蓄積し、個性をつかんで、よりよい音を目指す。その繰り返しを続けていきます。

将来についてはまだ具体的なビジョンを持っていません。今はとにかく地道にコツコツと仕事に取り組み、成果を重ねていきたいと思います。その結果、何らかの分野のスペシャリストになれたら嬉しいと考えています。それが具体的に何なのかは、これから見つけていくことになるでしょう。

今はコロナ禍で活動をお休みしていますが、私は会社でもバンドを組んで演奏しています。周囲は音楽好きな人ばかりで、音楽に囲まれて生活していると実感します。
私は、音楽は“心の医療”だと思っています。幼い頃から楽器を習い、音楽に関わってきて、辛いときには音楽を聴いて元気をもらい、イライラするときも音楽で心を落ち着かせてきました。いつも音楽がそばにあり、これからもずっと音楽と一緒にいたいと思っています。

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