「勘」を「論理」へ。伝統の茶葉に揺るぎない品質を刻む、品質保証リーダーの使命。
「勘」を「論理」へ。伝統の茶葉に揺るぎない品質を刻む、品質保証リーダーの使命。
このストーリーのポイント
- 現場での焙煎経験と営業での国際認証取得を通じ、お茶を多角的な視点で捉える力を養った。
- チーム全員が高いクオリティを維持できる体制を一から作り上げる。
- パズルを解くような論理的思考を武器に、世界から信頼される品質を目指す。
静岡の伝統ある茶業に携わり、製造現場での焙煎技術習得と営業職での国際認証取得を経て、現在は品質保証グループの初代リーダーを務める。職人の「勘」に頼る体制から脱却し、組織として客観的に品質を担保する仕組みづくりと、食の安全を最優先する若手育成に注力。現場経験と論理的思考を武器に、27ラインある製造工程の全てで最高品質を実現し、世界から信頼されるお茶づくりを目指していく。
アシードグループ
増田 和真
静岡ローストシステム株式会社
品質保証グループ 次長
2011年/中途入社

静岡県出身。入社後2年間の製造現場で焙煎技術の研鑽を積み、茶葉の「骨格」を学ぶ。その後営業部へ異動し、手探りで国際認証「レインフォレスト・アライアンス」の取得を完遂。2023年のアシードグループ入りを機に品質保証グループを新設し、初代リーダーに就任。
当たり前の風景を「一生の生業」に。焙煎の炎から学んだお茶の骨格。
静岡に生まれ育った私にとって、茶畑は馴染みのある景色である以上に、「生活」に身近な存在でした。幼い頃、祖母の家へ遊びに行けば、当たり前のように急須でお茶が淹れられて、その香りが部屋いっぱいに漂う。それは特別なことではなく、日常の風景としてお茶がありました。しかし、当時の私は、まさか自分が「お茶」を一生の仕事にするとは夢にも思っていませんでした。理数系の学校を卒業し、いくつかの仕事を転々としていた頃、私の心には「そろそろ腰を据えて働かなければならない」という焦りだけがありました。そんな時、ふと目にした新聞の求人広告。それが、今の私に繋がる静岡ローストシステムとの出会いでした。「せっかく地元で働くなら、全国に誇れるお茶に関わる仕事に携わりたい」という私の思いから、14年に及ぶキャリアの第一歩を踏み出したのです。
入社して最初に配属されたのは、製造現場の最前線である「焙煎ライン」でした。焙煎は香ばしさや風味を引き出すための熱処理の工程であり、夏場は立っているだけで汗が噴き出すほどの熱気です。大変な現場ではありましたが、私にとってその環境は新たな発見に満ち溢れていました。
お茶は農作物です。同じ茶葉でも、その年の気候や産地によって状態は驚くほど異なります。それを一定の品質、狙った通りの風味に仕上げるのが焙煎の技術です。気温、湿度、機械の温度、そして投入するタイミング。あらゆる工程で微調整を重ねながら品質をコントロールしていく過程は「自分の調整一つで、このお茶の味が決まる」というプライドを芽生えさせてくれました。
普段何気なく飲んでいる「お茶」ですが、その製造工程がいかに奥深いものか、入社前までは知りませんでした。2年間の製造現場での経験は、お茶の「骨格」を知る貴重な時間となり、その後の私のキャリアを支える強力な揺るぎない土台となったと確信しています。

「加工のプロ」としての自負。現場経験を武器に世界基準の価値を創る。
製造現場で手応えを感じ始めていた頃、営業部への異動が決まりました。当時、静岡ローストシステムは営業力の強化を掲げており、「現場を熟知している人材が営業を担当する」という方針のもと、白羽の矢が立ったのが私でした。当初は全く異なる職種への異動に戸惑いましたが、「新しいことを学べるなら、やってみよう」という前向きな気持ちで営業の世界に飛び込むことにしました。
当社は自社ブランドを持たない受託加工の会社です。当社の最大にして唯一無二の強みは、日本茶、紅茶、中国茶、ハーブティーなど、世界中のあらゆる茶葉を扱える「多品種・多様な加工ライン」にあります。工場内にはさまざまな製造ラインが稼働しており、異物除去などの精製から、風味を引き出す焙煎まで、お茶に関する加工の大半を一貫して自社で完結できます。この柔軟な対応力を武器に、日々の営業活動に邁進していました。営業の仕事は単なる「作業の代行」ではありません。クライアントの「こんな味にしたい」「商品の付加価値を高めたい」という要望を具現化する、いわば「技術とサービスのスペシャリスト」としての提案が求められるのです。
特に印象的だった営業職でのプロジェクトは、海外の認証機関である「レインフォレスト・アライアンス」の取得です。レインフォレスト・アライアンスとは、持続可能な農業や森林管理を推進し、環境・社会・経済の3つの柱で厳しい基準を満たした農園や製品に対して与えられる認証です。大手クライアントからの「商品の付加価値を高めるために、認証を取ってほしい」という要望から始まったこのプロジェクトは、文字通り手探り状態で始まりました。英語の書類に四苦八苦しながらも、詳細を読み解くと、私たちが日々当たり前に行ってきた業務が、すでに世界の高い基準を多くクリアしていることに気づきました。営業活動と並行して膨大な書類と格闘し、現地審査を乗り越えたこの経験は、私に「品質の定義」をより広い視野で捉えさせる大きな転機となったのです。

正解のない問いに、独自の最適解を。一から仕組みを組み上げる「面白さ」を共に。
2023年、私たちの会社はアシードホールディングスの一員となりました。このグループ入りは、私のキャリアにおける最大の転換点となりました。それまで、当社の品質管理は各現場の裁量に委ねられており、製造担当者が良し悪しを判断するという職人の「勘」に頼った体制でした。しかし、グループ入りを機に「組織として客観的に品質を担保する独立した部署が必要だ」という声が上がり、新設された「品質保証グループ」の初代リーダーとして、私が指名されたのです。
当初は私を含めてわずか3名。「品質保証グループは何をすべき部署なのか」という定義づくりからのスタートでした。私はまず、それまで各部署に散らばっていた製造書類の管理や検査業務を一つに集約することから始めました。手探りの毎日でしたが、幸いなことに、グループ入りした際に就任した新社長は、長年品質保証の道を歩んできたプロフェッショナルでした。社長から直接、品質保証の真髄を学ぶ日々。それは、現場経験と営業経験を持つ私の中に、新たな「専門性」という一本の軸が通った瞬間でもありました。
現在、私のチームは6名にまで拡大しました。しかし、課題は山積みです。 当社の強みは「多品種・多様な加工」ゆえに、工場内には大小合わせて27ものラインが稼働しており、世界中の紅茶、ハーブティー、中国茶などが次々と運び込まれます。この膨大なラインを、6名で品質管理を行うことは並大抵のことではありません。特に今、私が最も心を砕いているのは「若手の育成」です。現在のチームには入社1年未満の若手が中心となっています。彼らには、単なるルーティンとしての検査作業を覚えてほしいわけではありません。私が最も粘り強く伝えているのは、「効率の追求は不可欠だが、品質を犠牲にした効率化は、絶対に許されない」ということです。私たちは口に入れるものを作っています。私たちの判断一つで、食の安全が脅かされるかもしれない。その重みを伝え続けることが、私の最大の役割だと思っています。
アシードグループのビジョンである「人、地球、未来-すべての笑顔と健康のために」という言葉を、日々の業務に落とし込んでいくため、現状に甘んじることなく、社会から求められる品質基準のさらなる高みを常に意識して邁進しています。

不確定な要素に「論理」で答えを出す。パズルを解くような知的興奮が、この仕事の醍醐味。
これから私たちが成し遂げたいのは、現在27ある全てのラインにおいて、誰が担当しても最高の品質を実現できる強固な仕組みを構築することです。そのためには、新しい力が必要です。 私が一緒に働きたいと思うのは、例えばパズルが好きだったり、図形の証明問題を解くことに喜びを感じたりするような、論理的な思考を大切にする方です。
品質保証という仕事は、一見地味なチェック作業の連続に見えるかもしれません。しかし、その裏側には、原料の変動という「不確定要素」に対して、論理と技術で「答え」を出していく知的興奮があります。お茶が好きであることはもちろん歓迎ですが、それ以上に「物事を一から組み上げ、正しい形に整えていくこと」に価値を感じる人と、これからの静岡ローストシステムを作っていきたいと考えています。
また、人の五感を使った官能検査も品質管理の大切な要素の一つです。味覚・嗅覚を研ぎ澄まし、味の検査をするという工程は、機械やシステムだけでは完結できない領域です。このような属人的で職人的経験が求められる検査工程は、一朝一夕で身に付くものではありません。長い時間をかけてでも、じっくりと身に付けていってほしい品質管理の技術です。
静岡の伝統あるお茶文化と、現代の厳格な品質基準。その架け橋となるのが、私たちの仕事です。振り返れば、現場で茶葉の香りに包まれていた焙煎ラインでの経験も、英語の書類と格闘した営業職での経験も、すべてが今の私へと繋がっていました。
「静岡ローストシステムのお茶を、世界で一番信頼されるお茶にする」。この大きな目標に向かって、私は今日も品質と向き合っています。

