素速く一歩を踏み出す、ものづくり。「カヤバ」ならではの、喜びあふれる新製品開発物語。

素速く一歩を踏み出す、ものづくり。「カヤバ」ならではの、喜びあふれる新製品開発物語。

素速く一歩を踏み出す、ものづくり。
「カヤバ」ならではの、喜びあふれる新製品開発物語。

このストーリーのポイント

  • 楽しみながら新製品開発に挑んでいくカルチャーがある
  • 信条は「構想を得たらとにかく素速く一歩を踏み出すこと」
  • 若い技術者も情報収集のために気軽に海外へ飛ぶ

油圧技術を核に、独創的なものづくりを続けるカヤバ。前向きにチャレンジし、常に新しいものを吸収しようとする技術者たちの姿勢が、その原動力である。ここに紹介する「油圧シリンダ用油漏れ検知システム開発プロジェクト」を通じて、カヤバのものづくりの真髄を感じ取ってほしい。

PROFILE
カヤバ株式会社(KYB)

高橋 佑介

ハイドロリックコンポーネンツ事業本部
技術統轄部 システム技術部 設計室
2007年入社

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工学部機械システム工学科卒。車に関連した仕事がしたいと就職活動を進め、カヤバに入社。開発実験室、製品企画開発部、設計室を経て現職。仕事では主に建設機械向け製品を担当しているが、車好きには拍車がかかり、週末には車の整備やイベントに向かうなど趣味として満喫している。

国内最大手の油圧機器メーカーという安定性

出る杭が打たれないのが、カヤバという会社です。私もずいぶんと自由に泳がせてもらってきました。自宅にいろんな創作物が転がっているとか、溶接や塗装も家でやっちゃうとか。新しいもの好きで、3Dプリンターも家庭用が登場するとすぐに購入、家でも会社でも開発と試作に明け暮れる。「高橋はそういうヤツだから」と見てくれているのか、常に自由に新しいことに挑戦させてもらったと感謝しています。

海外にもずいぶん行かせてもらいました。サウジアラビアに行ったのは1年目か2年目だったと思います。一緒に行った先輩も2年目か3年目でしたから、ずいぶん若い社員だけで行かせてくれたことになります。不具合のある製品の回収という役目だったのですが、そんな責任ある仕事でも若手に任せてくれる、そんな会社です。

カヤバに入社したのは、車に関連した仕事がしたいというのが一番の理由でした。独立系で、国内最大手の油圧機器メーカーという安定性も魅力でした。
決め手となったのは、一緒に入社することになった同期の存在ですね。60人ほどだったと思いますが、みんな元気がよくて、明るく、感じがよかったです。自分と似たような価値観の仲間が多く、こういう人たちと一緒に働きたいと思いました。

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新しいアイデアをみんなで楽しむカルチャー

これまでいくつかのプロジェクトに関わってきましたが、印象深いのは現在も進行中の「油圧シリンダ用油漏れ検知システム開発プロジェクト」です。センシング技術を活用したチャレンジングな開発品であり、会社としても大きな期待を寄せています。電機・電子技術も積極的に取り込んでいるという点もポイントでしょう。
このプロジェクトの“芽”を見つけたのは2016年でした。
当時私は新事業策定のための事業企画部のプロジェクトに参画。既存製品のマーケットでの位置づけについての調査などと並行して、新しい製品開発に取り組むことになりました。
そこで私が提案したのが、社内へのヒアリングです。プロジェクトのメンバーだけでアイデアを捻り出しても限界があるため、技術者はもちろんのこと、営業も含めて、数百人に向けて「新製品のネタになるようなアイデアはないか」というメールを送ってみたのです。反応は素晴らしく、打てば響くように大勢の社員が返信してくれ、山のようにアイデアが集まりました。
これらを集計したExcelは、今も私のパソコンの中にあります。文字通り、カヤバの宝の山で、次の特許につながる“芽”もたくさん眠っているはずです。

集まったアイデアを前に、事業企画部のプロジェクトのメンバーは興奮しながら一つひとつ、検討していきました。ワイワイガヤガヤと、とても楽しかったです。
メンバーの間にあったのは、他に替えが効かないもの、先駆者が市場にいないものを生み出したいという思いでした。レッドオーシャンに飛び込むのではなく、ブルーオーシャンで闘いたいと考えていたんです。同時にカヤバの既存の技術が活かせるか、販売チャネルが活用できるかといった点も重視しました。
こうしたことから絞られてきたのが、センサーによって油圧シリンダの状態を監視できるようにするというアイデアでした。そこで私が状態監視のできる油圧シリンダという構想を具体的な図面に描き起こして、すぐに試作機を作ることになりました。それが2017年でしたから、非常に速いスピードだったわけです。
「構想を得たらとにかく素速く一歩を踏み出す」ことが、私の信条なのです。

実はカヤバには以前からアイデアコンテストという催しがありました。その記憶があったので、アイデアはたくさんの人から集めたほうがいいと考えて、このやり方を取り入れたわけです。
アイデア募集の際に添えたのは、「アイデアが採用されたとしても、何かをやってもらうことはありません」という一言です。つまり“言い出しっぺ”として仕事を振られる、責任を取らされることは一切ないと保証したわけです。
誰もが常にアイデアを温め、こういう機会があれば楽しみながら一緒になって参加してくれる、そんなカルチャーがカヤバにはあるのでしょう。

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開発者が自ら営業活動にも挑む

まず検出部分について試作し、これは行けそうだという手応えが得られたところで、神奈川県相模原市にある基盤技術研究所に協力を依頼しました。基盤技術研究所にはセンサーの専門家や無線の専門家、電機・電子の専門家など、多様な分野の研究者が集まっています。まさにカヤバの頭脳で、私はここを訪ねてアイデアを説明し、製品化に向けてのサポートをお願いしました。
製品企画開発部で受託製品としてセンシング機器を開発した際も基盤技術研究所の協力を仰いだことがあり、そこで培った人間関係が今回も活かされたのは間違いありません。そこに加えて今回は私が見つけた“芽”を育てるということで、自分自身が非常に前のめりでした。毎月のように岐阜県の可児市から相模原市まで足を運び、打ち合わせを重ねるなど、研究者の皆さんを巻き込んでいったわけです。「とにかく素速く一歩を踏み出す」姿勢があったからこそ、その後の取り組みにも加速がつきました。

こうして基盤技術研究所の協力を得ながら「油圧シリンダ用油漏れ検知システム」の試作品を製作。その段階で海外の展示会に出品し、反応を探りました。ユーザーである建機メーカーをはじめ、大勢の方が試作品を見てくれ、高く評価してくれたのは嬉しかったです。
当時はIoTという言葉が浸透し、建設現場での省力化が求められ始めた頃でした。例えば油圧ショベルの遠隔操作などは実用化されはじめてはいたのですが、調子が悪いからとシリンダの状態を見に行くのは人だし、アタッチメントや作動油の交換をするのも人のままなんです。そうした人手に頼らざるを得ない部分を何とかしなくてはいけないという意識が高まっていたという背景があり、試作品はそこも強くアピールしました。シリンダの予備を減らせるという点も、コストメリットにつながるということで評価されました。

展示会に出展するだけでなく、私が直接営業にも出向きました。
試作品を抱えて建機メーカーまで足を運び、開発者である私自身がプレゼンテーションまでします。たくさんの建機メーカーに直接うかがったと思います。その結果、幸いにも日本の大手建機メーカーでの購入が決まりました。最初の1セットです。製品化に向けての大きな手応えが得られました。
もちろんそれで満足しているわけではなく、ユーザーの使い勝手向上のためにも、改善を重ねていかなくてはなりません。ICT関連の技術の進化は凄まじく、開発時には最先端の技術であっても、最初の試作機から5年以上過ぎた今では、ベストではなくなっている技術もあります。これからも一歩先へと足を踏み出していきたいと思います。

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気軽に海外の展示会で情報収集

最初に配属された開発実験室では、「まずはやってみる」という姿勢と、複数の作業を並行して効率よく進めることを学びました。事業企画部のプロジェクトでは、油圧機器のマーケットの調査を通じて顧客視点や競合のポジションなどを学びました。自分の視野が社内から社外へと、ずいぶん広がったと思います。
製品企画開発部では、受託開発としてお客さまと打ち合わせを重ねながらセンシング機器を開発。苦労しましたが、顧客目線でのものづくりを学びました。同時に油圧機器製造工場での電子機器対応で、製造ラインの人たちとの人脈ができました。
今までの歩みを振り返って思うのは、社内外のいろいろな人と関わり、背中を押してもらいながら、取り組んできたということです。「油圧シリンダ用油漏れ検知システム」は、こうした積み重ねの上での開発でした。

カヤバの素晴らしい点は、若い技術者が学ぶ機会を非常にたくさん用意してくれることです。例えば海外での情報収集です。私自身、海外の展示会には気軽に出かけ、情報収集してきました。何度も中国やドイツなどで世界の最先端の技術を自分の目で確かめ、触れることができました。
若い技術者にはそうしたチャンスが年に2、3度ほど用意されていますし、海外の展示会に出展することもできます。海外の建設機械展示会なんて、皆さんもぜひ行ってみたいと思いませんか。私は今までたくさんの人に支えられてきたので、これからは若い世代を支えなければと思っています。ぜひ大勢の技術者に、海外で学ぶ機会を提供したいですね。

もちろん私も現状で満足しているわけではありません。さらに製品開発に挑みたいと考えています。それもマーケティング領域からのアプローチです。
油圧機器の市場をリサーチし、ブルーオーシャンを見つける。そこで勝者となるために必要な技術を検討し、開発に向けたロードマップを作る。そんな具合にマーケティングと技術を融合させた、製品開発に取り組んでいくつもりです。
次の一歩に向けて、また一つ、目線が上がったと感じています。

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