AI、クラウドを世界中に届ける「光」。この手で次の社会インフラを設計する。

AI、クラウドを世界中に届ける「光」。この手で次の社会インフラを設計する。

AI、クラウドを世界中に届ける「光」。この手で次の社会インフラを設計する。

このストーリーのポイント

  • インターンシップで感じた「自社製品への誇り」。トップレベルの技術者への憧れに
  • 基礎研究では味わえなかったチームで成果を出す面白さと難しさに魅了された。
  • 知見を集めて難題を突破。この成果を社会に届けるところまで追求し続ける

東京大学で物性物理学を学び、博士課程を経て日本ルメンタムへ入社した。インターンシップで出会った技術者たちの「自社製品への誇り」に惹かれたことが、光半導体の世界へ飛び込むきっかけとなった。新卒として史上最短で昇格を果たし、後輩の指導にも携わりながら、次の社会インフラを支える技術者として成長を続ける。

PROFILE
日本ルメンタム株式会社

恩河 大

デバイス設計部
2020年新卒入社
東京大学大学院 工学系研究科
物理工学専攻 博士後期課程修了

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幼い頃から人と協力することが好きだった。小学校では野球、中学以降は水泳に打ち込み、物理学への興味から東京大学へ進学し、物性物理学を専攻。「目に見えるものの物理」を探求して、博士課程修了後に光半導体の設計をわが道に選ぶ。

トップレベルの技術に対する誇りをインターンシップで感じた

物理という学問が好きで、東京大学に進みました。物理と一口に言っても、素粒子や宇宙のような「見えないもの」ではなく、目の前に存在する物質の性質を探る「物性物理学」に惹かれたのです。そこに存在するものを理解したい、自らの手で触れられる物体の仕組みを解き明かしたいという子どもの頃から抱いていた興味が強かったのだと思います。

私の専攻では、多くの人は修士2年を経て社会に出て行きますが、私は博士課程に進みました。仮に修士で就職活動を選ぶなら、大学院に1年少々で見切りをつけることになりますが、一人前の研究者・技術者になるための研究期間としてはとても短いため、博士課程に進み自分の研究をやりきることにしました。ただ、この頃から一つだけ明確だったのは、これまで自身が研究してきた成果をもとにした製品を作りたいという欲求があったということです。パン作りにたとえると、高品質なパンを製造するには、優れたパン窯が必要です。ただ私自身は、新しいパンを作る人になりたいと感じていました。半導体に置き換えると製造装置より、半導体そのものの性能・品質を追求する仕事が私にマッチしていると感じたのです。

大学院でインターンシップを計画し、当初はルメンタムのアメリカ拠点に行く予定でした。しかし経営的な事情から、日本の学生を受け入れることが難しいとの回答が届きました。そこで調べたときに、初めてルメンタムの日本法人があることを知り、すぐに私のインターンシップを受け入れてほしいとメールを送りました。2週間程度の期間でしたが、わざわざ私のためにインターンプログラムを用意していただき、ここで働く技術者の方々と過ごした時間は特別な体験になりました。

短期間でも、社員の皆さんが自社の技術に誇りを持っていることが私の心に強く残りました。「俺たちの技術が世界一だ」と言葉に出すわけではありませんが、日常の会話からそう信じているのが伝わってくるのです。技術的なディスカッションもハイレベルで、自然に「この人たちと一緒に働きたい」と思うようになりました。周囲の友人たちは大手企業を志望する人が多かったため、社員数の少ない外資系企業を選ぶのは不思議に思われたようです。しかし、私にとっては会社の規模よりも、尊敬できる人々と一緒に働ける環境が何よりも大切でした。

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1人では何も成し遂げられない。チームワークの重要性を知る

私は生産技術と迷った末、設計を志望しました。自分の描いたものが世に送り出される喜びを感じられると思ったためです。入社後は、設計部門だけでなく、他部署と連携することが多く驚きました。大学時代は、研究のサンプルを作り、測定や解析、論文執筆まで基本的にすべて一人もしくは、多くても数人で完結します。しかし企業では、設計した製品を実際に作るのは生産技術や製造部門の方々です。さらにマーケティングの方々とも連携しなければ、商品が認知されるのは難しいでしょう。文字通り、大きいチームで成果を出さなければならないことを知りました。

私はもともと控え気味な性格なこともあり、入社からしばらくは、製造現場の方に試作をお願いする際に「このぐらいの水準で大丈夫です」と、要望を曖昧に伝えてしまうことが少なくありませんでした。その結果、期待していたレベルとは違うものができ上がり、結果的にやり直しの手間をかけてしまったことがあります。この経験から、言うべきことは明確に言わなければならないと学びました。
また、先輩から社内の人間関係の築き方を教わったことも現在のチームワーク構築に非常に役立っています。現場のオペレーターの方々との雑談に混ぜてもらったり、「一緒に隣の部門へ話をしに行こう」と連れて行ってもらったり、このような積み重ねが信頼関係につながります。メールを介したコミュニケーションでは、返事が来るまで数日待つこともありますが、直接赴いて話せばわずか5分で解決した経験もしました。これが人と人が関わるチームワークを重視する仕事の面白さなのだと実感しました。

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降りかかった無理難題と思える試練。

昨年「半年以内にある特製を20%以上向上させる」というミッションが突如として、私たち設計部にくだりました。AIやデータセンターの需要が爆発的に増加する中、より大容量のデータ通信を実現するために、性能を大幅に向上させる必要があるというのです。私たちが設計する光半導体は、世界中のデータを運ぶインフラの心臓部にあたります。これからも通信量の増加が確実視される中、最速で大容量のデータをいかにして運ぶか、その社会的要請に応えることが私たちの使命でした。

しかし、私は無謀な目標だと感じていました。これまでも日々、悪戦苦闘しながら開発を続けている中、どれほど改善がうまくいったとしても、せいぜいプラス5%程度だと感覚的に頭の中で見積もっていました。それを一気に20%上げるというのは、常識的には考えられません。ただ課せられた以上、可能性を探るのが私たち設計部門の仕事です。一つだけ確信していたのは「今までの常識に捉われたままでは不可能である」こと。何か抜本的に発想を変えなくてはならないことだけは確かでした。そこで、社内外のあらゆる技術者に話を聞いて回ることにしました。当社には生え抜きのエンジニアだけでなく、中途採用で加わった方や会社の合併によって同じ会社の社員になった方などもいます。

常識をくつがえすには、こうした経験豊富な先輩方の知見が何よりも重要でした。30人、40人と話を聞き、知見をかき集めました。その中で一つのアイデアに私は着目しました。実は、かなり前から、性能をアップさせるのに有効と思われていたアイデアでした。しかし実現までのハードルが高くて、実用化はされていない技術だったのです。製造方法に工夫を重ねて、繰り返しテストした結果、突出した性能改善を示すことが判明しました。頭の中の常識をブレークスルーした瞬間だったと思います。ここに至るまでちょうど半年。多くの方々が蓄積してきた知見と、ほんの少しの実行力があったからこの成果を出せたのだと思っています。

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良い製品を世の中に届ける。そして社会は変わる

しかし、これで私たちの挑戦は終わりません。もし大学に残って基礎研究を続けていたなら「従来よりも大幅に光出力が向上した理由」を論文にまとめれば一つのゴールを迎えたことでしょう。しかし、ビジネスの世界では違います。適切な価格での量産を実現し、あまねく世の中に届けるところまでが私にとっての勝負です。どれほど優れた製品を作れたとしても、1年に1個しか作れなければ意味がありません。それよりも、高い品質を保ち何百万個と製造できる設計が求められるのです。このスケールアップの難しさこそ、企業での開発の面白さだと感じています。

この10年を振り返ると、私たちの会社が取り組んできた成果が、今のクラウド社会を支えています。今や社会に欠かせないクラウドサービスが身近な存在になったのも、光半導体という目に見えないインフラがあったためです。そして、今後の10年はAI・機械学習の活用がさらに増えるのは確実で、データ通信の需要も桁違いに増えます。そんな次の社会を支えるインフラを設計している実感が、私のモチベーションになっています。

リーダー職になり、後輩の指導も担当するようになりましたが、まずさまざまな職種の人との交流を強く勧めています。そして、ミスがあったときには素直に謝罪することです。当たり前のように思われるでしょうが、チームで成果を出すためには欠かせません。そしてもう一つ技術者に大切なのは、データに基づいた議論の徹底です。忙しいとつい、データを確認せず、過去の経験や主観で会話してしまいがちです。しかし、データやエビデンスを示した論理的な対話は、成果を生みやすく、社内で信頼を得ることにもつながります。

私が一緒に働きたいのは、そんなチームワークを追求できる人です。一方的に甘えたり、寄りかかったりするのではなく、自分自身が価値を提供しながら、チームとして大きな成果を生み出すことに喜びを感じられる人と、次の社会インフラを一緒に設計できる日を心から楽しみにしています。

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