流体解析のプロフェッショナルへ回り道の先で見つけた自分らしいキャリア

流体解析のプロフェッショナルへ回り道の先で見つけた自分らしいキャリア

流体解析のプロフェッショナルへ
回り道の先で見つけた自分らしいキャリア

このストーリーのポイント

  • プログラミングが合わず方向転換。数学・物理の分野をを新たに学ぶ
  • 入社直後、前任者不在の状態で未経験の流体解析業務に挑戦
  • 自分の得意・不得意を見極めることが、後悔のない就職活動につながる

入社直後、学生時代の専攻分野とは異なる流体解析業務を任されることになり、一から知識を付けていく日々。周囲の支えもあり、今では流体解析におけるプロフェッショナルとして活躍している。

PROFILE
Astemo株式会社

川上 桃花

eAxle設計部
2021年入社

astemo-st03-02.jpg

生産工学部卒。もともとの専攻は情報系だが、プログラミングが合わずに方向転換し、数学・物理を中心に学ぶように。現在は、ギアボックスの流体解析・設計を中心に担当している。

コロナ禍での柔軟な選考対応が、入社の決め手に

なんとなくの興味から、大学では情報系の学科に進学しました。しかしプログラミングの授業を受けてからは印象が変わり、言語を覚えてコードを書く作業が自分には合わない。将来を考えた時、プログラミングを一生の仕事にするのは難しいと思うようになりました。

それからは少し方向性を変えて、数学や物理の授業を中心に受けるようにしたら、プログラミングよりも自分に合っていることを実感しました。その延長として卒業研究では、自動車の防音性能を数理モデル(数字や数式を用いて事象を簡略化するモデル)で解析する研究に没頭していました。

これまでに学んだ数学や物理を少しでも活かしたものづくりがしたかったため、就職先は製造業を志望。特に自動車業界にはこだわらず、幅広い会社を見ていました。

数ある製造業の中でAstemoを選んだ理由は、柔軟な選考対応をしてくれたことにあります。就職活動をしていた2020年は、コロナ禍真っ只中。緊急事態宣言によって外出自粛が言い渡されたこともあり、どの企業も対面での説明会や面接の実施を見直す対応に迫られていました。

実は当時、他にも気になっていた企業があったのですが、その会社は採用活動を5月、6月とどんどん後ろ倒しに。想定外の状況であることはわかっていましたが、就活生の立場としては、いつ選考が再開するのか見通しが立たない不安がありました。

一方Astemo(当時は統合前のため旧ショーワ株式会社)は、一次から最終面接をいち早くオンラインに切り替えてくれたのが印象的でした。おそらく上層部の方々が柔軟な判断をしてくれたのだと思います。イレギュラーが起こっても臨機応変に対応してくれる安心感が決め手になり、入社しました。

astemo-st03-03.jpg

ギアボックスの内部を見える化し、設計に活かす

現在は、四輪車に搭載するユニット「デファレンシャルギアボックス」の解析・設計を行っています。デファレンシャルギアとは、車がカーブする時に起こる左右のタイヤの回転差を吸収する部品で、スムーズな走行に欠かせません。デファレンシャルギア単体では車に載せられないため、他の部品とともにユニット化したギアボックスとして扱っています。

メインの業務は、ギアボックスの中を回るオイルの流れを可視化し、その流れが適切かを評価する流体解析です。シミュレーションソフトを使いながら、中のオイルがギアの回転によってスムーズにかきあげられているかを確認します。

また、車の走行中はギアボックス内の油や空気が温まり、内圧が上昇します。ボックス内の内圧を逃がすため、通気管を接続して空気の抜け道を作りますが、そこからオイルが外に漏れてしまう可能性も。そこで、通気管を取り付けた場合のシミュレーションも行い、オイルが外に漏れるリスクがないかも検証しています。

入社以来、こうした解析業務を専門に行っていましたが、今年からは解析に加えて設計業務も任せてもらえるようになりました。手順としては、解析結果に問題がなければ、設計書通りにギアボックスの試作を実施。その後は試験車に試作品を搭載して、オイルがきちんと撹拌されているか、外に漏れていないかを確認します。もし試験がうまくいかなかった場合は、シミュレーションを振り返って原因を特定し、また設計に戻るサイクルを繰り返しています。

astemo-st03-04.jpg

社内外の協力を得ながら未経験の流体解析にチャレンジ

今でこそ、流体解析に関する基本的な知識は身につきましたが、入社したては右も左もわからない状態でした。大学時代に流体力学(液体や気体などの動きを扱う学問)を本格的に勉強した経験はありません。さらに、入社時は前任者が不在で直接引き継ぎを受ける機会もなく、まさにゼロからのスタートだったのです。

その当時直面していた課題が、先ほどお話しした、ギアボックスに接続する通気管からオイルが漏れてしまうこと。内圧の上昇が影響している予測まではできたのですが、より詳しい原因の特定は難しく、解決策を立てられずにいました。

そこで社内では、ギアボックスの内圧の変動を数値で細かく計算できるシミュレーションソフトの導入を検討することに。シミュレーションが可能になれば、客観的なデータをもとに原因と対策を明らかにできるからです。私はそのソフトの導入と、計算をスムーズに行うための初期設定や解析環境の整備を任されました。

初めての経験で、何から進めていくべきかもわからなかった私を助けてくれたのが、別の事業所に所属していた先輩です。Astemoとして合併する前に、流体解析を専門にしていた方で、合併によって得られた貴重なつながりでした。

先輩は、そのソフトをすでに使っていた経験があったので、操作方法や解析条件の設定方法など、基本的なことをたくさん教えてもらいました。事業所が別であるにも関わらず、電話やビデオ会議ツールを通して時間を取ってもらえたのは本当にありがたかったです。

ソフトの販売担当であるベンダーの方にもいろいろと相談しました。正直、最初は社外の方に基本的なことを聞くのに抵抗があったのですが、わからないまま時間が過ぎてしまうのはもったいない。そう気持ちを切り替えて、ソフトの使い方に関する疑問はとにかく聞くようにしていました。

社内外の方々とのやり取りを重ねる中で、身についたことがあります。それは、今起きている現象と、それが起きた背景、自分なりに考えた解決策を整理して相手に伝える力です。相手に聞くべきポイントと、自分でじっくり考えるべきことが見極められるようにもなりました。

最終的には、こちらがただ質問するだけではなく、相手とその場で意見を交わしながら課題に向き合えるようになりました。およそ1年かかりましたが、ようやく新しいソフトで内圧の変化のシミュレーションができるようになった時の達成感は忘れられません。

ちょうど同じ時期に、入社2年目の研修の一環で、所属先での研究成果を発表する機会がありました。発表の場では、他部署の方々にも「今後の設計や製品開発に活かせる成果だ」と評価いただき、大きな自信になりました。

astemo-st03-05.jpg

できることを増やして大きなプロジェクトに関わりたい

入社してすぐ、たまたま流体解析に携わることになりましたが、今ではこの仕事からキャリアをスタートできて本当に良かったと思っています。流体解析は難しさもありますが、対象が液体である分イメージがしやすく、割とスムーズに理解を深めることができました。シミュレーションによって今あるものの精度を上げていくプロセスはやりがいがありますし、自分で出した解析結果が、その後の設計に反映されると嬉しいものです。

私がこうして働けているのは、間違いなく周囲の皆さんのおかげです。同じ部署の先輩や上司、他の事業所の流体力学専門の先輩はもちろんですが、他部署の女性の先輩にも本当に気にかけてもらいました。入社したばかりの頃、周りには女性が少なく、少し心細かった私に「大丈夫?」と笑顔で声をかけてもらえて、パッと気持ちが明るくなったのを覚えています。

今後後輩ができたら、日々のちょっとした声かけを大切にして、安心して仕事に取り組めるようサポートしていきたいです。今までたくさんの先輩方に支えてもらった分、今度は自分が周りを支えていけたらと思っています。

今まで流体解析は極めてきましたが、今後は他の業務にも積極的にチャレンジして、できることを増やしていきたいです。すでに任せてもらっている設計業務をはじめ、様々な知識や技術を身につけて、より大きなプロジェクトに関われるよう頑張ります。

最後に、これから就職活動をする学生さんへ。ぜひ今のうちに、自分の好きなことや嫌いなこと、得意不得意を棚卸ししてみてください。私はプログラミングが合わないことに気づいてから、だいぶ遠回りをしました。ですが、そのいろいろな講義を受けたからこそ、自分に合う学問と就職先を見つけることができたので、後悔はしていません。納得のいく就職活動ができるよう、心から応援しています。

astemo-st03-06.jpg

TAGS
SHARE