Astemoブランドの製品を世界中に届け、安全なモビリティ社会を実現したい
Astemoブランドの製品を世界中に届け、
安全なモビリティ社会を実現したい
このストーリーのポイント
- 交通事故をきっかけに、車の安全を支えるものづくりをめざすように
- 自ら設計・改善に関わったラインが無事に動き出した瞬間がやりがい
- コストと品質のバランスを追求して世界中にAstemoブランドを届けたい
モータースポーツに関わる仕事を志していたものの、交通事故をきっかけに考え方が一変。車の安全を支えるものづくりに携わりたいと思うようになった。現在は、Astemoブランドの製品を世界に安定供給することをめざしている。
Astemo株式会社
吉原 駿介
生産技術本部
2021年入社

二輪・四輪のブレーキ装置における高い技術力が決め手になり入社。現在は、インドの供給先に対して既存の部品の増産体制を構築するプロジェクトに参画している。
交通事故をきっかけに、車の「安全」について深く考える
F1やSUPER GTなどのモータースポーツに関心があり、将来は何らかの形でそのようなレースに関われる仕事がしたいと思っていました。
大学では、学生フォーミュラ(レーシングカーを設計・製作し、その車両で競技を行う大会)に参加するためのチームに所属。毎年ゼロから新しい車を企画、設計、製造して、ようやく完成した車が道を走り出す瞬間は、感慨深いものでした。
オーストラリアのメルボルンで開催された大会「Formula SAE」にチームで出場して、タイムを競った経験も印象深いです。オーストラリアはF1をはじめ、多様なレースが開催されているのでカーレースの文化が強く、現地のお祭りのような熱気を肌で感じることができました。大会にはさまざまな国の学生が参加していて、つたないながらも英語でコミュニケーションを取って交流できたのも良い経験でした。
そろそろ就職活動の準備をしようと考えていた3年生の春、交通事故に遭いました。当時バイクで公道を直進していたところ、交差点を右折してきたタクシーと衝突。目を覚ました時は病院のベッドの上で、3ヶ月間の治療が必要なほどの大ケガを負っていました。
事故により学生フォーミュラの活動は断念し、改めて車の「安全」に関して深く考えるようになりました。私が経験したような事故を、できるだけ減らせるような社会を実現したい。レースに関わる仕事よりかは、人々がより安全に車やバイクに乗れるようなものづくりがしたいと、考え方が変わったのです。
そこで就職先の候補として検討したのが、Astemoへ統合前の日信工業でした。二輪車・四輪車用のブレーキ装置やブレーキシステムの技術力が高く、多くの人の安全に貢献する仕事ができると考えたからです。
他にも部品メーカーやサプライヤーを見ていましたが、最終的な決め手になったのは、日信工業の採用担当者の印象がとても良かったことです。松葉杖で会社説明会に参加していたのですが、担当の方が真っ先に気遣って声をかけてくれて。面接では、入社後もケガの治療を続ける必要があると伝えたところ、「全く問題ありません。一緒に働きましょう」と温かく受け入れてくれたので、この会社で働こうと決めました。

トラブルを乗り越え、ラインが動き出した瞬間の達成感は格別
入社後は、生産技術部に配属になりました。生産技術部の仕事は、設計・開発部門が作り上げた製品を量産するための生産ラインの設計管理をはじめ、既存のラインの効率化や、工場で不具合が発生した際の対応などさまざまです。どの業務もお客さまに安定した品質の製品を届けるために欠かせないもので、責任を持って取り組んでいます。
印象に残っているのは、入社2年目の時、二輪車用のマスターシリンダー(ブレーキレバーを握る力で油圧を発生させ、油圧をキャリパーに伝えてブレーキを作動させる部品)に欠陥がないかを確認する設備の不具合の解決に尽力したことです。
その設備は、センサーの付いたプローブをシリンダー内に回転させながら挿入し、内壁にある傷やへこみなどを検査するものでした。しかし、本来は傷を検出するためのプローブが内壁に干渉し、逆に新たな傷を付けてしまっていることが発覚したのです。
これには、設備を構成する各部品の公差(ある基準値をもとにして、許容される誤差)が関わっていると判断しました。部品単体では公差内に収まっていたのですが、各部品を取り付ける時のわずかな傾きやずれが累積し、結果プローブが内壁に接触していたのです。
そこで設備メーカーさんとも協議しながら、各部品の公差を改めて見直すことにしました。とはいえ、すべての公差を一律に厳しくすると、精度を確認するための検査や調整にかかる工数が増えてしまい、改善までに大幅な時間が必要になります。既存の設備で精度が満たせない場合は、ユニット交換などの大規模な調整が発生する可能性も。その間は設備を止めなければならず、生産体制にも影響が出てしまいます。
接触に関わる部品の公差は今より厳しくする一方、それ以外は全体のバランスを見ながら決めていくなど、メーカーさん側と綿密なすり合わせを実施。その結果、接触トラブルが解消し、安定した検査が行えるようになりました。トラブルを乗り越え、ラインが無事に動き出した瞬間の達成感は格別です。大学生の時に学生フォーミュラで一台の車を作り上げた時の感覚とも重なり、そうした喜びを仕事でも味わえていることに、大きな充実感を覚えています。
この経験を通して学べたことは多かったです。設備のどの部位にどの程度の精度が必要か判断する力が身についたので、他の設備を導入する時にも活かせるようになりました。
そして何より実感したのが、設備メーカーさんと対話することの重要性です。メーカーさん側に「この設備の精度を上げて」とあいまいな要求をするのではなく、どの部品の精度をどこまで高めるかを一つひとつ整理しながら伝えられたことで、今回の問題を解決できたと感じています。

インドへの長期出張を予定。若手にも大きな裁量が与えられる
インドでは、2026年1月1日以降に製造する二輪車へのABS(アンチロック・ブレーキシステム:急ブレーキ時のタイヤロックを防ぐ装置)の取り付けが義務化される予定です。この改定によりABS搭載車の生産拡大が見込まれるため、現在生産中のキャリパーやマスターシリンダーなどの既存の部品もあわせて増産する方針が決まりました。
そのため現在は、既存の部品の増産体制を構築するためのプロジェクトに携わっています。また、インドの納入先からは価格を抑えた形での供給が求められているため、原価低減策もあわせて検討中です。
キャリパーやマスターシリンダーなどのアルミ製部品を製造する場合、大きく分けて鋳造(溶かした金属を型に流し込み、冷やして固める工法)、加工、化成(表面処理)、組み立ての4つの工程をたどります。私はその中で加工の工程の生産ラインを担当しています。
私が提案した原価低減策は、マシニングセンタ(部品の面を平らにする加工や穴あけができる工作機械)で一回のサイクルで加工できる部品数を増やすことです。一回で加工できる数を増やせれば、その分加工にかかる時間が短縮し、結果的に原価を抑えられます。
実現するには加工条件などの見直しが必要になるため、現在はそれが実行できるかを検証中です。もし実現できれば、原価の低減において大きなインパクトが残せます。自らのアイデアを検証を重ねて形にしていけることも、生産技術の仕事の醍醐味だと感じています。
こうして積極的にアイデアを出せるのは、周りの先輩や上司が話しやすい雰囲気を作ってくれるからです。入社したての頃から意見を求められる機会が多く、そのおかげで自然と発言できるようになりました。
原価を抑えつつ量産化を実現するこのプロジェクトのゴールは、インドの現地工場で生産ラインを安定稼働させ、増産体制を作ること。プロジェクトの終盤にさしかかる頃には、インドに数ヶ月出張し、現地で納入・調整作業を行う予定です。海外への長期出張は初めてで、そこまで英語が得意なわけではありませんが、学生フォーミュラの活動で多国籍の学生と交流した経験を活かせればと思っています。
今後のビジョンは、就活をしていた時に掲げていた通り、車の安全を支える製品を世界中の人に届けることです。安全というと自動運転などの先進技術に注目が集まりがちですが、ブレーキ関連の部品を安定して供給できる体制を整えることも、安全のためには重要だと考えています。
特に海外では、弊社のブレーキの模倣品が流通していると聞きます。正規品よりも価格が安く、手に入りやすいから選ばれてしまう一方で、品質や安全性の面では懸念が残ります。模倣品ではなく正規品を選んでもらうためにも、今取り組んでいる原価の低減をはじめ、できることを模索していきたいです。
品質を維持しつつ、製造コスト低減を追求し続ける取り組みは、Astemoの認知を世界にさらに広げることにもつながると確信しています。ブランドイメージの向上にも貢献できるよう、力を尽くしていきます。

