工学系研究者として選んだ製薬企業の道。新薬を待つ患者様に応えるために──。

工学系研究者として選んだ製薬企業の道。新薬を待つ患者様に応えるために──。

工学系研究者として選んだ製薬企業の道。
新薬を待つ患者様に応えるために──。

このストーリーのポイント

  • 工学研究科で博士号を取得、アカデミアへの道も考える
  • 自分の研究で誰かの生命が救われたらという思いで製薬業界へ
  • 研究者としての本質的なスキルを発揮できていることにやりがい

高校時代から憧れていた研究者の道。工学博士として選んだのが製薬企業での研究者という仕事だった。多様性が求められる中、自分のバックグラウンドを誇りに、入社1年目から分析研究に取り組む。

PROFILE
日本新薬株式会社

研究開発本部 創薬研究所 分析化学研究部 分析化学二課
博士(工学)

nippon-shinyaku-st03-02.jpg

2022年入社。工学研究科 生命・応用化学専攻修了。愛知県出身。幼いころより研究者を志し、大学でタンパク質の物性を解明する研究を経て、製薬業界を志望する。面接で感じた雰囲気のよさに惹かれて、日本新薬への入社を決める。学生時代は陸上部で活躍し、今も週に一度、ランニングを楽しんでいる。

様々な価値観の人と接することを学んだ

私が工学部に進むことになったきっかけは、幼い頃に手にした雑誌『科学と学習』でした。毎月届くこの雑誌の付録の実験をするのが楽しくて自然と理系の科目が好きになりました。様々な本を読み、分子・原子に興味を持ち、この頃から研究者に憧れを持つようになりました。
大学は工学部に進学。生物に関する酵素反応や有機化合物の分子特性、それらの分析手法について学びました。もともと生物が生きている仕組みに興味があり、消化や光合成など、人間が実験室で起こすことのできないほど高度で緻密な生化学反応を詳しく知りたいと思っていました。そこで、研究室は生体分子であるタンパク質を研究しているところを選び、視覚再生などの新たな医療技術開発につながると期待される基礎研究に取り組みました。具体的には、光反応性のタンパク質を研究対象とし、このタンパク質が光に反応することで起こす構造変化を原子レベルで解明しようと日々試行錯誤していました。

研究ではタスクに優先順位をつけ、スケジュールを立ててこなしていく訓練ができました。この経験は仕事においても役立っています。また研究発表を通じて、自分の専門分野をわかりやすく人に伝える力も磨かれました。
案外重要だと思うのが“質問する人を選ぶ力”がついたことです。規模の大きな研究室だったため、疑問があったとき、どの先輩・ポスドクに尋ねればいいんだろうと迷うことがありました。経験を重ねて「この質問はこの先輩に尋ねるといい」と見極められるようになったことで、上手にアドバイスをもらえるようになったと思います。

研究以外で打ち込んだのは、陸上部の活動です。種目は800mでした。もともと走ることが好きだったので、部活動にも楽しんで取り組みました。
研究もそうでしたが、部活動でも様々な価値観やバックグラウンドをもつ仲間と一緒に過ごさなくてはなりませんでした。そのため自分と異なる価値観の人ともうまく付き合っていくことができるようになったと思います。学部2年生の時に東海地区の大会の800mで優勝。いい思い出ができました。

nippon-shinyaku-st03-03.jpg

穏やかな社風に惹かれて入社

高校生の頃には、将来は研究職に就きたいと強く思うようになりました。大学の研究室でタンパク質の物性を明らかにする研究に打ち込んだことでその思いは一層強くなり、アカデミアに残ることも考えました。しかし3年間の博士課程の間に、自分の研究が誰かの命を救うことにつながったら素晴らしいのではという思いが芽生えました。さらに、民間企業ではどのように研究が行われているのか興味が沸き、医薬系の民間企業への就職を考えるようになりました。

祖母をがんで亡くしたとき、抗がん剤の副作用の激しさを目の当たりにしたことは大きな衝撃でした。インフルエンザにかかっても薬を飲めば簡単に治る一方で、祖母のように薬に苦しみながらも薬に頼らざるを得ない人もいます。QOLを保ちながら病気が治せたらという思いも、製薬業界への志望につながりました。

製薬業界に絞って就職活動をした結果、日本新薬に決めました。一番の理由は、面接等で接した社員の雰囲気に惹かれたことです。皆さんとても穏やかで、自然と私も“素”の自分を出すことができました。この印象は今も変わっていません。
会社の“歯車”のような働き方はしたくないと思っていたので、自分が会社にどれだけ貢献できているかが実感できる規模なのもいいと思いました。
また専門性を活かして働き続けたいと思っていましたから、「くるみん」認定を受けた企業であることも決め手の一つとなりました。実際に子育てをしながら働き続けている女性の先輩がいますし、育休を取得する男性社員もいます。ここならば女性としてのライフイベントと研究者としてのキャリアを両立できると確信しました。

nippon-shinyaku-st03-04.jpg

品質を保証するための分析研究を担当

入社後は2週間の集合研修があり、その後、配属先でのOJTがスタート。教育係の先輩によるマンツーマンの指導のもと、業務を基礎から学んでいきました。
心強かったのは、ブラザーシスター制度です。これは教育係とは別の先輩が相談相手としてサポートしてくれるもので、私の場合は入社4年目の先輩がブラザーとしてサポートしてくれました。ブラザーは仕事に関することにとどまらず、どんなことでも質問できます。新入社員にとって会社生活はわからないことだらけ。「わからないことがわからない」のも珍しくないし、「誰に聞いたらいいかすらわからない」ことも多くあります。
そんなとき、とにかく最初に質問するのがブラザーの先輩で、「何を聞いてもいいんだ」という安心感は非常に大きかったです。
ブラザーの先輩とは半年に一度、改まって面談していただく機会もあり、自分の成長の振り返りや今後の課題などについてもじっくり話すことかできました。

私が担当しているのは、分析研究です。
これは新薬の候補化合物の物理的化学的性質を把握し、どんな不純物が含まれているか、構造はどうなっているかなどを明らかにして、医薬品としての品質評価の方法や基準をつくる業務です。分析にはHPLC(高速液体クロマトグラフ)を始め様々な分析機器を用います。それぞれの分析手法について自分で条件を検討し、得られた結果について上司とディスカッションし、研究を進める方向性を決めています。
自分の立ち上げた分析手法によって化合物の物性を解き明かす過程は面白く、入社1年目から重要な仕事を任されていることにやりがいを感じています。

わからないことに直面したら解決方法を考え、先輩に相談して新しい一歩を踏み出していく、そんな繰り返しの日々はとても楽しいものです。周囲の先輩は皆優しく、どんなに忙しくても、私の質問に対して決してイヤな顔はしません。仕事の手を止め、私としっかり向き合って相談に乗ってくれます。
新しい実験に取り組むときはワクワクし、研究者として歩んでいる実感が得られ、充実した日々を送っています。また、こうした業務の積み重ねがやがて人々の命を救う医薬品の開発につながっていくと思うとやりがいを感じます。
もちろん入社1年目のうちは、実験器具も装置も初めて使用するものばかり。それらの使用方法を身につけるだけでも成長を実感します。

nippon-shinyaku-st03-05.jpg

知識は入社してから身に着けられる

今はまだわからないことだらけで先輩に頼ってばかりですが、装置のトラブル対応やドキュメントの作成なども含め、早く自立した研究員になりたいと思っています。新しい機器の導入、国内外の企業との連携にも取り組んでみたいですし、他部門と連携しながら自分主導で仕事を進められるようになっていきたいと思います。

研究を推進する力そのものはアカデミアでも企業でも、本質的な部分では共通していると感じます。学生時代の経験を活かしつつ現在の仕事に必要な知識を身につけ、先輩社員を目標に成長していきたいと思っています。
新薬の開発には非常に多くの時間と労力がかかります。患者様のためにも一日も早く新しい医薬品を届けられるよう、研究に打ち込みたいと思っています。

工学部の後輩からは「製薬業界に関心があるけれど、薬学部と比べて就活では不利では」や「機械やプログラミングの技術しかなくて、製薬会社からは縁がないと思われているのでは」という声をよく耳にします。実は私もかつてはそう思っていました。でも思い切ってエントリーし、入社してみると、そんな心配はまったく杞憂であることがわかりました。
確かに会社には薬学部出身の社員が多いですが、薬学部の卒業生だけを採用しているわけではありません。むしろ薬学部以外の学生に門戸を広げ、採用の幅を広げようとしています。その背景には、より多様性のある人財が新薬の開発には必要であるという考え方があります。 それに薬学部出身者でも仕事で必要な知識の多くは、入社してから学んでいます。「薬学部じゃないから」といって引け目を感じることなく、自信をもってエントリーされることをお勧めします。
門は皆さんの前でしっかり開かれています。

nippon-shinyaku-st03-06.jpg

TAGS

日本新薬についてもっと知りたい方はこちら

SHARE