変革を恐れぬ老舗薬局で 患者に寄り添い 服薬の「その後」を見守る

変革を恐れぬ老舗薬局で 患者に寄り添い 服薬の「その後」を見守る

変革を恐れぬ老舗薬局で患者に寄り添い服薬の「その後」を見守る

このストーリーのポイント

  • 前例にとらわれない社風に共感し入社
  • 若手も管理職に昇進、経験値を増やし自身も成長
  • 患者の服薬フォローに感じる、大きなやりがい

老舗の薬局でありながら新しい働き方や既存のビジネスに固執しない前向きな姿勢に惹かれ大賀薬局への入社を決めた。3年目で店長に昇進。薬を処方した後に患者の状態を定期的に確認することの意義を感じ、店舗として常時提供できる仕組みづくりを目指し奮闘を続ける。

PROFILE
株式会社大賀薬局

笹川 嵩孔

調剤薬局事業部 天神ビル店店長

福岡大学薬学部卒、2018年4月入社。

福ビル店、西鉄福岡駅店、徳洲会病院前店を経て2020年12月から現職

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福岡県生まれ。父親の転勤に伴い、2度のアメリカ暮らしを経験。茨城県の高校を卒業後、関東の大学進学を目指すも福岡大学に合格し「これも何かの縁」と福岡へのUターンを決めた。社会人になってからゴルフを始め、大学時代の友人らと毎月1度はラウンドしている。ベストスコアは100ちょうど。

※22年10月1日 第9ブロック ブロック長へ昇格

 

「薬は多くの人を救う」という言葉に出会い、医学よりも薬学への関心が湧く


福岡県の都市部を中心に大分県や沖縄県などに100店舗以上を構える大賀薬局で薬剤師をしています。創業から120年を迎える老舗の薬局らしく、4世代でお世話になっていますという声を地元の方からいただきますね。

薬剤師の仕事は自分の性格と合致していると感じています。私は前に出て目立ちたいタイプではなく、子どものころから、どちらかと言うと裏方が向いていると思っていました。薬剤師は病気を治すために自分が先頭に立って治療をするのではなく、陰ながら必要なサポートをしっかりする仕事ですから。

最初に薬学に興味を持ったのは中学生の時です。私の学校は中高一貫で、中学卒業前に自分でテーマを決めて研究する課題が出されます。本や論文を調べていると「医者は1日に見られる患者数は限られている。でも、素晴らしい薬が出来たら数えきれない人を救うことができる」という文章に出会いました。将来は医者を念頭に医療の現場に行きたいと思っていたのですが、この文章で薬の世界へ関心が湧きました。

大学は薬学部に進みました。でも薬剤師ではなく、研究職を得て創薬を手がけたいと考えていたのです。薬剤師は「薬を処方箋と交換し袋に詰めるだけ」と、正直少し見下していたところがありました。考えが変わったのは、外国の薬学部生と交流するプログラムに参加してからです。大学3年か4年のころでした。

参加していたアメリカの学生から、薬剤師の業務範囲の広さを聞いて大きな衝撃を受けました。アメリカでは薬剤師が予防接種を行っていたり、点適時に感染症が発症した場合の薬を投与したりと幅広く活躍しています。日本の薬剤師も単なる処方に留まらない業務を手掛けていかないと社会から必要とされなくなってしまうのではないか、日本の薬剤師はいま過渡期に立たされているのではないかと悟ることになりました。

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新しい挑戦を受け入れる企業風土が入社の決め手

日本で薬剤師がもっと社会に貢献するにはどうしたらよいか―。そんなことを考え、共感してくれた友人らと大学4年の時に合同会社を設立しました。企業に対し薬学生が就職活動時に本当に知りたい情報が何かを提示するほか、インターンシップのコンサルなどを中心に行っていました。

就職活動にあたり、私は合同会社とのダブルワークを認めてもらえることを一つの基準にしました。「前例がない」と後ろ向きな企業がある中で、大賀薬局は「今までそんな人いないけれど、いいんじゃない」と新しい働き方を受け入れていただきました。合同会社はその後2年ほど続け、友人の脱退に伴い解散しました。

合同説明会で何社か薬局の説明を聞きました。従来業務を中心に説明する薬局がほとんどでしたが、大賀薬局は違いました。経営陣から「処方箋で調剤するだけの経営ではだめ。ドラッグストアなど他のビジネスと一体となった新しい業態を作るためにお金を使っていかないと生き残れない」と伝えられました。自分が思いを巡らせていた次代の薬剤師・薬局像と同じでしたし、老舗でありながら変革を求めている姿勢に感銘を受けたのです。この企業なら、何か新しいことにチャレンジしようとしたときに応援してくれるだろうと考えて入社を決めました。

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さまざまな店舗で重ねた経験、3年目で店長に

入社してから4店舗で勤務しました。店舗によって特徴が全く違います。最初に勤務した福ビル店は一日に来る患者さんは300人程度です。普通の薬局は60~80人くらいですから大規模な薬局です。処方する薬は鼻水からがんまでと幅広く、総合的な知識が求められて大変だったことを覚えています。3店目の徳洲会病院前店は全国でも珍しい24時間処方箋を受け付ける薬局で、病院もそばにありましたから救急の処方もよくありました。

2020年12月、4店目となる天神ビル店に異動するタイミングで店長に昇進しました。入社時、薬剤師の同期が35人ほどおり、店長になった順番は3、4番目くらいなので、比較的早い昇進です。大賀薬局では若手でも管理職として昇進することは珍しくありませんし、成長の機会となります。私は「俺についてこい」タイプではないので管理職に向いていないと考えていましたが、店長を任せられると推薦してくれた上司がいたわけですから、自分ができることをしっかり頑張ろうと思いました。

天神ビル店は1日に訪れる70人程度の患者さんを、自分を含め薬剤師、医療事務計10人のスタッフで対応しています。店長は決して偉い立場ではなく、意思決定や不測の事態への対応などを含め、日々の業務を滞りなく行える環境づくりを進めることが役割と心得ています。

いまの薬局に来てから、患者さんの「看取り」に関われたことが大きな経験でした。がんの患者さんを治療していた病院の先生から、在宅医療に切り替えることになったため、その間の薬の提供を依頼されました。患者さんが自宅で亡くなるまで薬局が関わるケースは都市部ではあまりないことですし、スタッフも「どうしよう」という雰囲気でした。私は徳洲会病院前店で同様の事例に少し携わったことがあり、その知識をもとに店舗として準備を進めました。通常処方する薬だけではなく、医療用麻薬の処方の仕方や薬局での管理方法に習熟していることが求められます。ある程度のマンパワーも必要です。結果的に、スタッフと協力しながら滞りなく最後までサポートできました。

最期を住み慣れた自宅でという希望は、今後増えていくのではないかと想像します。患者さんの希望通りの治療を薬の面から提供できるよう、薬局は態勢を整えないといけないと強く感じました。

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服薬フォローの仕組みづくりを目指して

店長になって2年が過ぎようとしています。自分がやりたいと思っていたことが、ようやくでき始めた段階ですね。その一つが処方薬のアフターフォロー(服薬フォロー)です。

患者さんに渡した薬に対し責任を持ち、その薬で症状がどう変わったかを電話で確認するのです。もし薬が患者さんに合っていない場合、早めの再受診や減薬、ポリファーマシー(複数の処方薬などを飲み合わせることで起きうる健康被害)の解消につながります。服薬フォローによって患者さんから「実は主治医には相談できなかったことがあって」と相談されることもあります。治療に関し医者とは違う縁の下の力持ちとして、患者さんに寄り添えることにやりがいを感じます。

服薬フォローは2020年9月に施行された改正薬機法で、薬剤師の仕事として義務付けられました。とはいえ実際にはどのように患者さんに確認したらいいのか、やり方が見えず戸惑っている薬局もあるようです。自分の店舗で考えると、新しく入ってきた社員に「患者さんに渡して良くなった薬か、悪くなったのか、困っていることなどを聞き取り、次の処方に活かすことが求められているんだよ」と話すと、すんなり理解してもらえています。浸透してきたなという感じですが、他の店舗に行くと「何かやらなきゃ」という段階にとどまっていることもあります。

どの店舗でも当たり前に服薬フォローを提供できる状態に持って行きたい。その仕組みを会社組織としてどのように整えていくか、今後の目標として取り組んでいきます。

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