「産みの苦しみ」の先に、「製品」が結実する。 その喜びこそが、技術者にとっての「ご褒美」です。

「産みの苦しみ」の先に、「製品」が結実する。 その喜びこそが、技術者にとっての「ご褒美」です。

「産みの苦しみ」の先に、「製品」が結実する。
その喜びこそが、技術者にとっての「ご褒美」です。

このストーリーのポイント

  • エプソンの産業用ロボットのフィールドでの活躍を知る
  • 工場の生産性を飛躍的に向上させるロボットの開発に取り組む
  • 現在のロボット開発が生産現場の悩みを解決し、新時代を拓く

昨今ロボットは、人の作業の「代替」から「不可能を可能にする存在」へ。そして、より複雑・高度でフレックスな動きを人と協調して行う「協働」へと進化を続けている。岩佐は、そんなロボット開発最前線を担う技術者だ。

PROFILE
セイコーエプソン株式会社

岩佐 康平

ロボット企画設計部
2018年4月入社/工学研究科・知能システム工学専攻課程修了

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産業用ロボットは、生産現場の生産性向上はもちろん、安全性向上や設備・設置場所の省スペース化、運用負荷やコスト削減など、製造業の経営戦略を支える重要な要因ともなっています。そこで、各技術部門や営業、販売会社などを巻き込んだ製品戦略を進めています。

「人とロボットが共生する社会」への夢を抱いて

高校時代は、ジャグリング部で活動していました。ボールやピン、リングなど複数の物を投げ上げたり、受け取ったりする動作を繰り返して、投げ上げたものが空中に浮いている状態をキープする競技です。大学でも仲間を募ってジャグリングサークルを立ちあげ、地域のお祭りや公民館などの施設で、自慢のワザを披露。多くの人たちに喜んでもらいました。 また、子供時代から『ドラえもん』のファンで、人とロボットが共生する社会への夢を想い描いていました。そんな想いもあり、大学ではロボット研究に打ち込み、3年次に就職か進学か…、と悩みましたが「さらに学びを深めたい」と研究科に進みました。

研究テーマは「アームロボットの最短軌道計画」。ロボットアームが障害物などを避けながら、初期の姿勢から目標とする姿勢に至るまでの軌道を、最短距離で導く研究です。 修士課程の修了を控え、就職を意識した企業研究を進める中で、エプソンがプリンターやプロジェクターなどのコンシューマ製品だけでなく、産業用ロボットのフィールドでも活躍していることを知りました。「将来、両者の架け橋となり、人々の暮らしに寄り添う民生用途のロボットを産み出すこともできるのではないか…」と、志望意欲が一気に高まりました。

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ラインのスピードアップと生産性向上に貢献

私が所属するMS(Manufacturing Solutions )企画設計部は、商品企画、6軸メカ設計、スカラメカ設計、制御設計、制御アルゴリズム開発設計の5つの課があります。私の所属する制御アルゴリズム開発設計課は、さらに「モーション」、「サーボ」、ロボットに人の手のような感覚を持たせる「力覚」の3チームに分かれており、私はロボット性能を向上させる機能開発に取り組んでいます。

具体的には、産業用ロボットの機能追加や新製品開発企画設計を行う部署の中で、「コンベアトラッキング機能」の開発設計を担っています。これは、工場生産において、コンベアで搬送される対象物(ワーク)の移動距離や速度などの情報を収集して、追従・並走しながら作業を行う技術です。つまり、コンベアを止めることなく、ロボットが搬送されてきたワークへの作業を行う機能です。

途中でコンベアを止めたり、再度動かしたりすることなく工程を進めることができるので、スピードや生産性も向上。さらに、一旦ワークをピックアップして作業するためのスペースなども不要になるので、ラインの面積効率も向上します。

ここで難しいのは、動き続けるコンベア上のワークにアクセスするので、如何にその「流れ」を予測して正確に捉えることができるか、という問題です。ロボットは可動範囲に流れてきたワークの動きに同期して動作します。それをキャッチし指令を出すコントローラと、ハードウェア間の誤差をどう担保するか…、が技術者として最も悩ましいポイントであり、同時に腕の見せ所でもあります。

私は、入社2年目から、この「コンベアトラッキング機能」に取り組んでいますが、同期性のテーマに取り組んだ既存製品の改善案件では、約3mmの誤差を1mmにまで縮めることができました。

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優先順位づけとトレードオフ問題の解決

実は「コンベアトラッキング」は、しばらく開発が停まっており、私が数年ぶりに専任担当に指名された開発分野でした。開発に再注力し始めた背景には、生産現場の環境変化の中で、「コンベアトラッキング」ニーズが急激に拡大している、という時代背景がありました。それだけに競合関係も厳しく、各社がしのぎを削っていますが、「コンベアトラッキングが優れているから、エプソンを選んだ」と言われるような製品づくりを目指して、日々研鑽に励んでいます。

一方、しばらく開発が停まっていた分だけ、改善要望も山積状態だったのです。しかし、機能改善や追加開発要件は、部署によってまちまち…。そこで営業、製品戦略、製品企画、販売会社など各部門の協力を仰ぎ、要件の整理・優先順位づけを行いました。そこで、お客様利益を基軸に、優先すべき項目とそれを実現するための技術を、星取り表的にマトリクス化して見える化。誰もが納得できるカタチでプライオリティづけをして、開発ロードマップを描いています。

ちなみに、「コンベアトラッキング」を巡るニーズは大きく【精度/スピード/使い勝手(ユーザビリティ)】の3つです。しかも、それぞれが「あちらを立てれば、こちらが立たず」と相互背反するトレードオフ関係にあるのです。それらに優先順位をつけながら、「如何にトレードオフ関係の両立を図って解決するのか?」というテーマは、確かに難問です。しかし、そんな難問だからこそ、技術者としての手腕が発揮でき、やりがいが生まれる源泉でもあるのです。

関連部署の人たちと議論を闘わせたり、協力し合ったり…。そんな「産みの苦しみ」の向こうに、確かな努力がカタチとして実った製品が産まれます。さらに、その製品を活用して、生産活動を加速させるお客様が存在します。その手応えを実感できる点が、私たち企業の研究者の喜びであり醍醐味だ、と痛感しています。

ラインのスピードアップと生産性向上に貢献

昨今、製造業の生産現場における悩みは、少子高齢化による人手不足や、ベテラン技術の伝承性の断絶。さらに、益々短サイクル化する新製品投入やライン変更に対するアイドルタイムの圧縮、作業者の習熟度による効率・成果のばらつきやヒューマンエラー、そして働き方改革や安全確保など、多岐にわたっています。

そんな悩みの解決策として、ロボットは益々不可欠な存在となっていくはずです。つまり、24時間安定稼働による生産性向上と平準化をはじめ、ヒューマンエラーの排除(歩留向上)、多品種小ロット・高頻度のライン変更への柔軟な対応性など、ロボットならではの世界が実現するのです。そんな新時代を拓く最前線を担っているのだ、という自負とプライドが、私たち開発部隊のモチベーションともなっています。

私たちが目指すのは、世界市場で選ばれる製品づくりです。もちろん国や地域によって、あるいは同じ日本国内でも、お客様ごとに求められるものは微妙に異なってきます。しかし、ハードウェアには汎用性をもたせ、パラメータの設定等でフレキシブルに対応できる製品を、さらにはAIを活用して、マシン自身がお客様ごとの使い方やニーズを学習しながら、自己診断・自己チューニングを行う成長性をもったマシンを産み出していきたいと思います。

また、冒頭で述べたように、将来はコンシューマ製品へのロボット技術展開を図り、人の暮らしをより豊かに、楽しくするイノベーションを起こしていきたい、と夢を膨らませています。

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