プロジェクトストーリー:導き出したのは「スタンドバイクレジット」という方法。商工中金の海外ネットワークを活用し、インドネシア現地法人での資金調達を実現

プロジェクトストーリー:導き出したのは「スタンドバイクレジット」という方法。商工中金の海外ネットワークを活用し、インドネシア現地法人での資金調達を実現

プロジェクトの概要

ショベルカーやタンクローリーなどの建設機械をはじめ、農業機械や特殊機械に使われる金属加工部品を製造している株式会社汎建製作所。早期から海外事業を推し進めてきた同社には、どのような悩みが潜在していたのか。船場支店の上田美希が汎建製作所とのエピソードを振り返る。

PROFILE
株式会社 商工組合中央金庫

商工中金 船場支店

上田 美希

2013年入社。神戸支店に5年間勤務した後、船場支店に異動。営業窓口として約130社の企業を担当し、財務内容の改善など経営全般にかかわる幅広いソリューションを提案している。

工場に足を踏み入れて、一目でわかったスケール感。

—— 汎建製作所さんは、どのような特徴や強みを持つ企業なのでしょう?

世界的に有名な日本の大手建設機械メーカーや農業機械メーカーなどに、燃料用タンクやマフラといった部品を供給している企業です。取引先である大手メーカーとも共同で部品開発をされていて、設計から製造までを一貫して自社工場で手がけられるのが強み。金属部品メーカーとしては全国でも有数の規模を誇っています。私が汎建製作所さまの担当になったのは2019年8月ですが、本社工場を訪ねてみると、その敷地は非常に広く、大きくご商売をされているのが一目でわかりました。

—— 上田さんはそんなお客さまに、どんな働きかけをしていったのですか?

汎建製作所さまは、業界の先駆けとして1995年にインドネシアへ進出し、積極的な海外展開をされています。ご提出いただいている決算資料などを見ても、海外事業の数字が伸びているのが把握できたため、こちらの面で何かお手伝いができないか、と考えました。 そこで、海外の法規制などにも詳しい国際部の担当者に同行を依頼して、お客さまのニーズや経営課題を一緒に詳しくお聞きしていったところ、インドネシアの現地法人が資金調達にご苦労されているとわかったのです。

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日本の中堅・中小企業が、海外で資金調達をするのは簡単なことではない。

—— お悩みの背景にあった事情とは?

同社のインドネシア現地法人「PT. HANKEN INDONESIA」は、世界各国にある取引先の工場に製品を供給しているグローバルの製造拠点です。アメリカ向けなどを中心に増加している海外需要を取り込むために、生産設備の増強や効率化を図ろうとされていました。事業方針を正確に把握するべく、日本本社の社長、現地法人の社長、さらに取引先の方とも面談をさせていただきましたが、海外事業に懸ける想いの強さはすべての方に共通するものでした。インドネシア工場に設備投資が必要だという認識も一致していました。しかし、日本の中堅・中小企業が海外で資金調達をしようとしても、現地での借入は容易ではないということが、お悩みの原因だったのです。 そしてこんなときこそが、私たちの出番。商工中金の海外ネットワークを活用し、ぜひともサポートさせていただこう、と思いました。一方、商工中金は地域の金融機関と連携しながら企業支援をしていくのが基本的なスタンスですので、今回もお客さまのメインバンクである南都銀行さんと一緒に融資ができる手法を検討していきました。そうして導き出したのがスタンドバイクレジットという方法です。

—— スタンドバイクレジットについて教えてください。

金融機関Aが金融機関Bにスタンドバイクレジットという信用保証状を発行し、保証状を受けた金融機関Bが海外法人にご融資をする仕組みです。今回は、商工中金が南都銀行さんからスタンドバイクレジットを受け入れて、インドネシアの現地法人に直接融資をする方法が最適であるという結論になりました。

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「メインバンクの力になってほしい」という経理部長の気持ちに応えるために。

—— 地域の金融機関は一般に、海外案件を手がける機会が少ないと思いますが、南都銀行さんはこれまでに同種の手法を採った経験があったのですか?

いいえ、ありません。ですが、汎建製作所さまの経理部長は、長年お付き合いのある南都銀行さんを大切にしたいと思っていらっしゃいました。「メインバンクの担当者の力になってほしい」という部長の想いに応え、南都銀行さんに今回の融資形態をご理解していただけるよう、国際部の担当者も含めた打ち合わせを複数回行いました。また、資料作成や審査面のバックアップも全面的にさせていただきました。

—— インドネシアへの融資案件は、その後もスムーズに進みました?

それが実は…。ご融資の契約書類は現地法人の方にも調印をしていただく必要があったのですが、現地の郵便事情の悪さから到着予定日を過ぎても書類が届かずに、お客さまと二人、「間に合わなかったらどうしよう」とひやひやした一幕が。最終的にはぎりぎり間に合って、事なきを得ましたが、このようなアクシデントも海外融資ならではですね。

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長年の悩みが解決。現地法人の自立的な活動が始まろうとしている。

—— 2019年12月に実行したという融資の内容を聞かせてください。

お客さまの資金計画を踏まえ、為替リスクも抑えられるよう、期間10年の長期ドル建て融資を500万USドル実行させていただきました。このうちの半分は南都銀行さんのスタンドバイクレジットを付けたご融資です。お客さまの資金需要に即したこのようなご融資は、ほかの金融機関にはない提案だったため、「これで長年の悩みが解決できた。さすが商工中金だ」とのお言葉をいただくことができ、感激しましたね。

—— 今回の融資を経てお客さまとの距離も近づいたのではないですか?

ええ。特に経理部長とは密なやりとりを重ねてきたこともあり、世間話なども含めて、いろいろな事柄を素直にお話しいただける関係性になっていましたが、今回のご融資を経て、さらに踏み込んだ対話をさせていただけるようになりました。また、インドネシア現地法人の社長も、何かあればメールで気軽にご相談をお寄せくださるようになっています。

—— インドネシア現地法人は今後の事業について、どんな展望をお持ちなのでしょう?

現在は、世界的にまん延している新型コロナウイルス感染症の影響で苦戦されているご様子ですが、事態が収束した後は、日本の親会社から自立して、さまざまな事業展開を進める絵を描かれています。海外現地法人が自立した事業運営を行えるようになれば、国内は国内事業に専念することができ、グループ全体としての成長力が高まります。 ですから私も、国内・海外の双方に目を向けて、資金提供はもちろんのこと、本業支援なども併せた経営全般のお手伝いをしていきたいと考えています。

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※今回の物語の舞台となった企業:株式会社汎建製作所(インドネシア工場)

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