デジタル時代こそ、リアルな感覚が生み出す楽しさ・価値にこだわりたい。百貨店だからできる挑戦のために。

デジタル時代こそ、リアルな感覚が生み出す楽しさ・価値にこだわりたい。百貨店だからできる挑戦のために。

デジタル時代こそ、リアルな感覚が生み出す楽しさ・価値にこだわりたい。百貨店だからできる挑戦のために。

このストーリーのポイント

  • 九州エリア限定正社員として、博多阪急開業と同時期に入社
  • 自ら望んで大阪の本社に異動し、キャリアの幅を広げる
  • デジタルとリアルの融合を通じて、新しいワクワクを博多に

博多を元気にしたいと選んだ道。こだわり続けてきたのは、リアルな体験に基づく自分ならではの肌感覚だ。百貨店という業態を舞台に、新たな価値の創造に挑み続ける。

PROFILE
株式会社阪急阪神百貨店

Yusuke

博多阪急
OMO販売企画部

hankyu-hanshin-dept-st12-02.jpg

福岡県出身。法学部法律学科卒。2011年入社。博多阪急 紳士ファッション販売部、婦人服飾品販売部、紳士ファッション販売部マネージャーを経て、2020年に大阪の本社に期間限定で異動し、第1店舗グループ モードファッション商品統括部モード商品部バイヤーを担当。阪急うめだ本店モードファッションのバイイング、神戸阪急新館のリモデルプロジェクトにも携わる。2023年に博多阪急 OMO販売企画部に異動し、2025年よりディビジョン マネージャーに。


バックパック旅行で学んだこと

沢木耕太郎の紀行小説『深夜特急』に触発され、学生時代にはアルバイトで資金を貯めてはアジア各国をバックパッカーとして旅をしました。未知の土地や文化を自分の目で見て、肌で感じてみたいという知的好奇心からでした。
当時と違って今はスマホで世界中の情報が入りますし、SNSで誰とも簡単につながることができます。私自身、手の平の端末で世界中のことを知ったつもりになって、本当の意味で知識や情報、経験を自分のものととらえることが難しくなったのかもしれません。自分の心が動くような経験をすることで、相手にも本当の感動が伝わるのではないでしょうか。この感覚は今も私を動かす原動力となっています。

約1か月、バックパックを背負ってインドからネパールへと旅をしていたとき、ヒマラヤ山脈近くのダージリンという場所にある広大な紅茶畑で、日本の百貨店の名前が記されている看板が目に飛び込んできました。“なぜこんなところに日本の百貨店が”という驚きとともに、華やかな売場とは遠く離れた場所で茶葉を仕入れるために海外の農園と契約をしていることに百貨店という業態の奥深さを感じ、百貨店業界に興味を抱く出発点となりました。
阪急阪神百貨店を知ったのは、大学の就職説明会がきっかけです。地元・博多に新しく誕生する百貨店ということで関心を持ちました。開業と同じタイミングで入社できること、福岡の街を元気にすることに携われると感じたこと、説明会や選考過程で合った社員のみなさんの人柄と個性を活かして働いているところに惹かれていったことが入社の決め手となりました。

私の感覚ですが、福岡は新しいものを受け入れる土壌があり、好奇心にあふれた土地柄だと感じています。当時、九州で阪急阪神百貨店はほとんどなじみのない存在でしたが、街全体が開業を楽しみにしていました。
開業は2011年3月。入社前だった私は、その日をアルバイトという立場で迎えました。覚えているのは、開店前から長蛇の列で、博多駅前広場が開店を待つお客様でぎっしりと埋め尽くされている光景です。開店後も地下1階から地上8階まで、すべてのフロアが花火大会のような混雑ぶりでした。
福岡のお客様は新しいものにとても敏感で、まず一度は体験してみる方が多いのだと感じました。一方で、その後も選び続けていただけるかどうかは別の話です。だからこそ、従来の百貨店の枠を超えた楽しさや面白さを提供し続けなければならない──そんな思いで気を引き締めたことを覚えています。

hankyu-hanshin-dept-st12-03.jpg

価値創造の源流へ、自ら飛び込む

入社して配属されたのが紳士ファッション販売部でした。もともとファッションは好きだったのですが、仕事となったことで生活費の大半を洋服につぎ込み、四六時中ファッションのことを考えて過ごしました。プライベートでは自分の好きな服を好きなように自由に着ればよいですが、お客様にご提案する際には、シーンに合わせた着こなしのルールを理解していなければなりません。ファッションには想像以上に多くのルールが存在することを知り、驚くと同時に、その奥深さに魅了されていきました。
次第に服づくりの工程そのものにも興味を持つようになり、自らお取引様にお願いしてシャツやスラックスなどの工場を見学させていただくようになりました。実は九州にはものづくりの工場が数多くあり、有名ブランドの工場も数多くあります。お願いしてそれらを見学させていただいたことで、現場でどのようにつくられているかが肌感覚として納得できました。何でも見て確かめてやろうという、バックパックでアジアを放浪していたときと同じ感覚だったと思います。

大きな転機となったのは、9年目に大阪の本社に異動したことです。それまで博多阪急で紳士ファッションを皮切りに様々なカテゴリーで、自主売場やイベント企画を経験する中、商品部のバイヤーとしてマーケットやお客様の価値観の変化を先取りして商品を仕入れ、あるいは、新しいコンテンツを企画・具現化する、「価値創造の川上」に携わりたいと思うようになりました。
実は私は「九州エリア限定正社員」の枠で入社したため、博多阪急でキャリアを積んでいくことが基本でした。ところが、その後「博多勤務の社員が3年間限定で転勤できる」という新しい制度が設けられたのです。私はこの制度を活用して本社への異動を自ら希望し、実現することができました。百貨店の業務を一通り経験し次のステージでさらに成長をしたいと考えていた私にとって、新たな挑戦のきっかけとなりました。

異動した先は、大阪の本社、第一店舗グループ モードファッション商品統括部です。直前まで博多阪急で先進的なファッションを追求するモードフロアを担当していたので、その経験を活かせたらとの狙いでの配属だったと思います。ここで私は阪急うめだ本店3階モードワールドにおけるバイイング・コンテンツ開発と、神戸阪急新館リモデルプロジェクトを担当しました。
グローバルな視点で先進的なファッションを取り扱うモードカテゴリーは、世界的なデザイナーやブランドが生み出す斬新なクリエーションによって、お客様の既存の概念や価値観を覆す「価値創造の最前線」といえる場所です。この環境で私は、価値創造に粘り強く取り組む姿勢の大切さや、成果を生み出すために関係者を巻き込みながらチームで挑むことの重要性、そして仕事のやりがいを深く実感しました。これらの経験は、その後の仕事へのスタンスに大きな影響を与えてくれました。

hankyu-hanshin-dept-st12-04.jpg

地域のためにという想いを貫く

私にとって大きな挑戦だったのは、神戸阪急新館のリモデルプロジェクトでした。
2022年8月オープンの「Hankyu Mode Kobe」開発において出店交渉からオープンまでを推進、経験させていただきました。その中で取り組んだことの一つとして、地域の本質的な魅力をモードワールドの立場からどう伝えるかという課題がありました。
試行錯誤をする中で、博多時代から関心のあった「地域材の利活用」に着目。
地域材とは、神戸・六甲山の間伐材や道路拡張工事などで発生する木々など、街の維持管理の中で生じる木材を指します。私たちは、この地域材の利活用を推進するため、放置されがちな廃材を店舗設計・商品開発に取り入れることを発信力のある複数のブランドに提案することを考え、ブランドの売場環境における什器やモニュメント、販売商品を地域材で制作するプロジェクトを立ち上げました。
当初は地域のプロジェクトパートナーやブランド側から「本当にやるの?」と半信半疑の反応もありましたが、関係者と粘り強く対話を重ね、共感してくれる仲間を少しずつ増やしていき、課題を一つ一つクリアしていきました。結果として、造船業の町、神戸ならではのクラフトマンシップとグローバルブランドの先進的なクリエーションが融合したこれまでにない空間をつくり上げることができました。

プロジェクト過程は本当に厳しいことの連続でしたが、関係者とともに情熱を注ぎ、粘り強く挑戦を続けることは、単なる業務を超え、地域や社会に新たな価値を生み出すことにつながると実感できました。プロジェクトパートナーの関係者の皆様と、すべてのプロダクトが完成しお披露目できた日の喜びを分かち合えたことは一生忘れられない経験です。仕事だから投げ出さずにやり切るのは当然のことですが、一緒に汗を流した誰かと喜びを分かち合いたいから頑張る──それこそが、私の職業観の原点にある気がしています。

3年間の出向を終え、2023年、博多阪急に戻りました。所属はOMO販売企画部です。
OMOとは Online Merges with Offline の略で、オンラインとオフラインを融合させる考え方を指します。お客様との最初の接点はデジタルが中心となり、そのデジタルの世界の中にリアルな店舗体験やサービスが位置づけられる、という考え方です。
私が担当しているのは、博多阪急全体を媒体としたテーマ型企画のディレクションにおいて、企画設計から販促プロモーションまで一貫して推進する役割です。これまでに、こどもの未来を探究する「こどもカレッジ」や、「ART」をテーマにし、福岡市のFaN(Fukuoka Art Next) Weekと連動した「ART PARTY」など独自のテーマを設定し、部門やカテゴリーを超えた商戦企画を実行してきました。
「お客様をワクワクさせたい」という想いを共有する仲間たちと、顧客ニーズを深掘りし、ユニークな発想で仮説検証を重ね、企画を形にしていくプロセスは醍醐味にあふれています。

hankyu-hanshin-dept-st12-05.jpg

新しい驚きと感動を、福岡の街に

2025年3月、博多阪急は開業から14周年を迎えました。開業初日、多くのお客様で埋め尽くされた光景が、つい昨日のことのようです。以来「博多どんたく港まつり」や「博多祇園山笠」などの地元行事への継続的な参加、地域のお取引先様との対話を重ねた共創活動に取り組み、時には百貨店の枠を超えた企画にも挑戦してきました。こうした活動を通して、地域の皆さまに少しずつ受け入れていただき、「親切で楽しい百貨店」「博多といえば博多阪急」と感じてもらえることが増えたと実感しています。

これからは、単にモノを販売するのではなく、顧客基点でモノ・コト・情報・サービスを組み合わせ、お客様に“驚き”や“感動”を届けるコンテンツとして提供していきたいと考えています。私たちの強みである「企画力」と「編集力」をさらに磨き、オンラインとオフラインを融合させた体験を通して、お客様の心を動かす体験価値を創造し続けたいと思います。

私には2歳半の息子がいます。子どもと一緒に過ごしていると、日常生活のさまざまな場面でふとした違和感に気づくことがあります。たとえば、ベビーカーが通りにくい動線があること、もっとこんな表示・サービスがあったら良いのに!など、小さな気づきをしっかり受け止めることが、「お客様視点で考える力」や「リアルな生活者感覚」につながると実感しています。
また、子供が見せる予測できない行動や発想は、大人の常識をあっさり越えていきます。年齢を重ねるにつれて自分の中に “常識” “思考のクセ” が蓄積されてきたことを自覚しており、息子の様子にハッとさせられ、教えられることがあります。

最後に、博多阪急で一緒に働く皆さんにぜひ大切にしてほしい3つのことを伝えたいと思います。1つめが「知的好奇心が強いこと」です。急速に変化する時代やお客様のニーズに対し、関心を持って自分で情報を掘り下げる姿勢が、成長の原動力になると思います。
2つめは「情報や体験を“編集”する力」です。商品にサービスや体験、情報といった付加価値を加え、コンテンツとして編集してお客様に届けることが百貨店の仕事です。「この商品は誰に、どう提案すれば喜ばれるか」と考え、価値を再構築できる力が求められます。
3つめが「自分の言葉で“伝える力”」です。自分の経験や感じたことを自分の言葉で語り、相手に響くように伝える力が重要です。
お客様のライフスタイルや価値観は急速に変化していきます。自らの好奇心と経験を活かし、新しい価値を編集し伝えられる人こそ、これからの博多阪急百貨店を面白くしてくれると期待しています。

hankyu-hanshin-dept-st12-06.jpg

TAGS
SHARE