メガベンチャーからメガバンクへ。「金融×エンタメ」で切り拓く三菱UFJ銀行の新規事業
メガベンチャーからメガバンクへ。
「金融×エンタメ」で切り拓く三菱UFJ銀行の新規事業
このストーリーのポイント
- 40代でメガベンチャーから金融へ。異業界への転職を選んだ理由
- 自ら起案したエンタメ領域のプロジェクトをグループ横断で事業化
- 専門性を「橋渡しのチカラ」に変え、産業と金融をつなぐ新規事業をつくる
MUFGが持つアセットと、銀行の外から持ち込まれる専門性。その掛け算から、まだ見ぬ価値を生み出す挑戦を続けているのが三菱UFJ銀行の事業開発室だ。
ITコンサルティング企業やメガベンチャーを経て、40代で三菱UFJ銀行へ。自ら起案したコンテンツプロジェクトを立ち上げ、非金融領域を掛け合わせた新規事業の創出に取り組む。異業種で培った経験がMUFGのアセットと出会ったとき、どのような価値が生まれるのか。金融と非金融、銀行とエンタメ。これまで距離のあった世界をつなぎ、事業へと変える。未知の分野へのチャレンジは、まだ始まったばかりだ。
株式会社三菱UFJ銀行
狩谷 典之
経営企画部 事業開発室

ITコンサルティング企業、ベンチャー企業、メガベンチャーを経て2022年に入行。経営企画部事業開発室にて自ら起案したコンテンツプロジェクトを立ち上げ。2025年6月には三菱UFJ信託銀行と協働で、映画製作を対象とするファンドの設立を実現。2026年8月には、事業化を見据え、日本のクリエイターやスタジオの海外市場開拓の支援をめざした実証実験を開始。コンテンツプロジェクトの多角化に向けた責任者として新規事業の創出に取り組むとともに、新規事業開発人材の育成にも力を注いでいる。
大企業から生まれる新たな挑戦に可能性を感じた
もし昔の自分に会って「40歳を過ぎて銀行員になっているよ」と伝えても、きっと信じないでしょう。
久しぶりに会った人から「今は何をしているの?」と聞かれ、「三菱UFJ銀行にいます」と答えると、必ずと言っていいほど驚かれます。転職をサポートしてくれたエージェントでさえ、「まさか(銀行を選ぶとは!)」と驚いていたのが印象に残っています。
過去の私を含め、私を知る多くの人にとって予想外のキャリアチェンジだったのだと思います。しかし、当時の私にはごく自然な選択でした。
20代はITコンサルタントとして、主に大企業を対象にITを活用した経営や業務改革に取り組みました。インターネットやデータベースシステムの活用が現在ほど一般的ではなかった時代です。ITの力で企業の仕組みを変え、働く人たちの行動を変えていくことに大きなやりがいを感じていました。
30代では、一般の消費者に向けたモバイル領域でのサービスや事業の創出に取り組みました。日本発のデジタルサービスやコンテンツの海外展開にも携わり、日々、市場環境が変わる中でスピード感のある刺激的な仕事に数多く挑戦することができました。
一方、世界を見渡せば、デジタルによって社会や人々の生活を変えるサービスやスタートアップが海外から次々と生まれていました。
「日本からも世界を変えるようなインパクトのある事業を生み出すには、何が必要なのだろう」
そんな問いを、いつも心のどこかに持っていました。
もちろん、日本のスタートアップにも新しい技術やアイデアを素早く形にする力があります。しかし、事業を生み出す場所はスタートアップだけではありません。長年培ってきた顧客基盤、人材、専門性、信用、資本力を持つ大企業だからこそできる事業創出もあるのではないか、むしろ日本の強みはそこにもあるのではないか。そう考えるようにもなりました。
世界で活躍する日本の企業を見渡すと、その多くは大企業です。大企業が持つアセットを、既存事業のためだけではなく、まだ世の中にない新しい価値の創出に活用できるのではないか。そのポテンシャルについて考えを深める中で、次第に強い関心を抱くようになりました。
そんなタイミングで出会ったのが三菱UFJ銀行でした。金融の枠を超えた新規事業の創出に本気で取り組もうとしていることを知り、「ここでなら、これまでとは違うアプローチで社会に大きなインパクトを与えられるかもしれない」と興味を持ったのです。40歳の節目を過ぎた頃でした。

アセットを、何のために、どう使うか
2021年の銀行法改正により、銀行の業務範囲や出資に関する規制が大幅に見直され、一定の条件のもとで、金融以外の領域にも取り組める余地が広がりました。そうした環境変化を背景に、新規事業の創出を担う組織として2022年に発足したのが、経営企画部事業開発室です。
私の考えていた“大企業から新しい価値を持ったビジネスを生み出す”という挑戦が、まさに始まろうとしていました。これまで培ってきた経験や知見を持ち込み、MUFGのアセットと掛け合わせることで、日本の産業や社会に貢献する事業を生み出せるのではないか。私にとって、二度とないチャンスに思えました。
もちろん、不安もありました。それまで金融業界とは異なる領域でキャリアを重ねてきた私が、銀行という歴史ある組織の中で本当に力を発揮できるのか。デジタル領域を中心に働いてきた自分にとって、仕事の進め方やカルチャーが大きく異なるのではないか。そんな懸念はありました。
しかし、面接で様々な方と話す中で、その不安は少しずつ薄れていきました。実際に入行してみても、良い意味で予想を裏切られる毎日でした。周囲の皆さんが驚くほど自然に受け入れてくれたのです。分からないことがあれば丁寧に教えてくれる。新しい提案をすれば、まず真摯に受け止めてくれる。必要があれば、社内外の人脈も惜しみなく紹介してくれる。長い歴史を持つ組織だからこその規律や慎重さがある一方で、新しいことに挑む人を支えるカルチャーがありました。
三菱UFJ銀行には、国内有数の顧客基盤、幅広い産業知見、国内外のネットワーク、金融に関する高度な専門性、そして積み重ねてきた社会的信用があります。
ただし、重要なのはアセットを持っていること自体ではありません。
大切なのは、お客さまや社会の課題を起点に、そのアセットを何のために、どのように使うのかということです。そこに明確な志と、事業としてやり切る覚悟がなければ、どれほど大きなアセットも価値には変わりません。
新規事業は、アイデアを提案して終わる仕事ではありません。
顧客や業界の課題を捉え、仮説を立て、収益モデルや事業スキームを設計する。法務・規制、リスク、会計といった論点も整理し、社内外の関係者を巻き込みながら、実証、投資判断、事業化へと進めていく必要があります。
特に銀行では、スピードだけを優先して事業を進めることはできません。社会的な責任も踏まえ、多くの論点を一つずつ検証し、関係者の理解を得ながら前に進むことが求められます。簡単ではありませんし、むしろ、うまくいかないことや厳しい局面の方が多いと思います。一方で、そうした高い山を乗り越えた先には、銀行のアセットを生かして、非常に大きなインパクトを生み出せる可能性があります。
「規律の中で、大胆に動く」
その難しさと面白さの両方が、三菱UFJ銀行で新規事業をつくる醍醐味だと感じています。

金融とエンタメ。距離のあった世界をつなぐ橋渡し役として
事業開発室での私のミッションは、新規事業を創出し、将来の収益の柱に育てることです。その第一歩として着目したのが、日本のエンターテインメントコンテンツ産業でした。
日本には、面白い物語や魅力的なキャラクターが次々と生み出される、世界的に見ても稀有な文化があります。漫画、アニメ、映画、ゲーム、音楽をはじめ、日本のエンタメコンテンツは国境を越え、世界中に多くのファンを生み出してきました。
一方で、作品ごとの収益性を予測することが難しく、金融機関として十分に支援しきれない領域でもありました。
優れた作品や、それらを生み出すクリエイターの魅力が、世界中のファンに確実に届けられ、長く愛され続けるために、金融機関として何ができるのか。その問いから、コンテンツプロジェクトを起案しました。
取り組みの一つが、2025年6月に公表した「Japan Creative Works1号投資事業有限責任組合」の設立と出資です。三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、コンテンツ業界の関係者が、それぞれの強みを持ち寄り、新たなエンタメ作品の創出を支える仕組みを構築しました。MUFGとしては、三菱UFJ信託銀行がファンドを運用し、三菱UFJ銀行が約66億円の出資をしています。金融側が資金調達と投資の仕組みを支え、コンテンツ制作側が高品質な作品づくりに力を注ぐ。異なる産業が連携することで、日本の高品質なエンタメ作品が継続的に生み出され、世界中のファンに届けるための新しい選択肢をつくろうとする取り組みです。
もちろん、これは私一人の力で実現したものではありません。
事業性、リスク、法務・規制、投資判断をめぐって多くの議論を重ね、グループ内外の様々な専門性を結集した結果です。構想を事業に変えるまでには、多くの関係者の理解と協力が欠かせません。それでも、自ら起案したアイデアが多くの仲間を巻き込み、約66億円の出資を伴うビジネスへと育っていったことには、大きな意味を感じています。キャリア入行者が起案した構想であっても、社会的な意義とMUFGとしての価値が認められれば、これほどの規模のことができる。
自ら考えたアイデアを、チームでビジネスの形にして、産業にインパクトを与えられる環境は多くないと思います。MUFGのグループ各社と連携しながら、その挑戦ができることは、三菱UFJ銀行ならではの魅力だと思います。
「なぜ銀行がエンタメを?」という問いを越えて
2026年8月には、次の取り組みとして、日本のクリエイターやスタジオの海外市場を開拓する支援に向けた実証実験を開始しました。
作品創出のための資金調達・提供をするだけでなく、作品を生み出すクリエイターやスタジオそのものの魅力を伝え、海外の市場やファンとの接点を強固なものとする。日本から生まれた優れたエンタメ作品を、より確実に世界へ届ける後押しとなる仕組みの構築をめざしたものです。
エンタメコンテンツ業界と銀行は、これまで必ずしも接点の多い世界ではありませんでした。プロジェクトを進めるなかでは、業界の方々から「メガバンクが、なぜこの領域に取り組むのですか?」と聞かれることも少なくありませんでした。
もっともな疑問だと思います。
しかし対話を重ねるにつれ、その疑問の裏側には、三菱UFJ銀行に対する信頼や中立性への期待があることにも気付かされました。
「私たちの業界にも、ようやくメガバンクが正面から向き合ってくれるようになったのですね」
そう言っていただいたときは、本当にうれしかったですね。国内だけでなく、海外の企業からお話をいただく機会も増え、三菱UFJ銀行がグローバルで築いてきたネットワークと信頼の大きさを改めて認識しました。
行内でも「なぜ銀行がエンタメなのか?」という声はありました。ただ、頭ごなしに否定されることは一度もありませんでした。むしろ、「この人に話を聞いてみたらどうか」、「この会社を紹介できるかもしれない」と、多くの方が新たな人脈や知見を提供してくれました。当行の顧客基盤やネットワークの広さを認識すると同時に、未知の領域に挑む人を後押しするカルチャーを感じた場面でもあります。
もちろん銀行とエンタメでは、収益やリスクの捉え方、時間軸、意思決定の際に使う言葉も異なります。片方の世界で当たり前のことが、もう一方では当たり前とは限らない。事業を前に進めるには、それぞれの考え方を理解し、互いに伝わる言葉へ翻訳しながら合意を作っていく必要があります。
それこそが、私が担うべき「橋渡し」の役割なのだと思います。今もさまざまな壁にぶつかり、そのたびにチームで試行錯誤しています。それでも諦めずに前へ進めば、日本のエンタメコンテンツ産業発展に貢献できると信じています。その使命感を、私だけでなく、チーム全員が共有して取り組んでいます。

他業界で培ってきた経験が、銀行と産業をつなぐ架け橋になる
銀行での仕事を通じて、改めて気づいたことがあります。
それは、キャリア入行者として、新規事業を担う者の役割です。
エンタメコンテンツ産業とメガバンクの両方を理解し、その間をつなげられる人間は世の中にはそれほど多くないと実感しました。前職でエンタメコンテンツに携わった経験があり、そこから銀行に入った自分だからこそ、それぞれの課題がわかります。自身の知見を、銀行が持つアセットと結び付けられるからこそ発揮できる価値があります。
これはエンタメコンテンツ産業に限った話ではありません。
銀行の外で、ある産業や顧客と真剣に向き合ってきた人が銀行に入れば、その人だからこそ発見できる課題があり、その人にしか架けられない橋が生まれるはずです。
金融業界の外で積み重ねてきた経験は、決して回り道ではありません。むしろ、三菱UFJ銀行にまだない視点を持ち込み、新しい事業を生み出すための重要なアセットになります。
ただ、新規事業は思いついたアイデアを自由に語るだけの仕事ではありません。お客さまや産業の課題を深く理解する力、仮説を立て、検証する力、事業として収益を生み出す仕組みを考える力、異なる専門性を持つ人たちを巻き込み合意形成する力。そして簡単に答えが出ない中で、最後まで粘り強くやり切る力が必要です。
新規事業に挑戦できるのは、特殊なスキルや経歴を持つ人だけではありません。我々が一緒に働きたいのは、完成された答えを持つ人ではなく、自ら問いを立て、専門性を掛け合わせながら、事業化まで粘り強く進められる人です。
今後入行する方には、既にあるプロジェクトを支援するだけでなく、自らテーマを見つけ、新しい事業の責任者をめざしてほしいと思っています。
なぜ自分はここにいるのか
三菱UFJ銀行では、既存の金融機能を起点とする事業に加え、金融と非金融を掛け合わせた新たな事業領域にも挑戦しています。
事業開発室としても、今後も「金融×非金融」の新規事業を生み出し、将来的には一つの事業本部として独り立ちできるような規模に育てていきたいと考えています。
私自身にとっても、このビジョンを実現することがキャリアにおける大きな目標です。当行が長年培ってきた知見や強みと、キャリア入行者が持ち込む経験や発想を掛け合わせる。そこから事業開発室ならではのカルチャーを育み、次々と新しい事業が生まれる好循環をつくっていきたいと考えています。
今でも折に触れて自分に問いかけることがあります。
「なぜ自分は三菱UFJ銀行を選んだのか」
答えはシンプルです。この場所だからこそ実現できる、スケールの大きな挑戦があるからです。もちろん、これまでとは異なる環境に戸惑うこともあります。思うように進まず、立ち止まりそうになることもあります。そんなときは、入行時に抱いていた志に立ち返ります。なぜここに来たのかを改めて問い直すことで、もう一度、前を向くことができます。
当行で新規事業の創出に取り組めることを知らない方は、まだ多いと思います。だからこそ、まずはこうした挑戦が始まっていることを知っていただきたいと思います。
銀行の外で多様な業界や顧客と向き合ってきた経験は、三菱UFJ銀行に入ることで、その人にしか架けられない橋になります。アイデアを事業として形にしたい。自分の専門性を、産業や社会に残る大きなインパクトへ変えたい。もし自身の専門性を次のステージで試したいと思うなら、MUFGにはその挑戦を共に形にしていく環境があります。当行だからこそ実現できる次の事業を、一緒につくっていきましょう。

