商社にとって大切なのは、お客さまとの信頼関係だと思う。

商社にとって大切なのは、お客さまとの信頼関係だと思う。

厚木SCは関東西部の比較的広い地域に、管材、住設、電材等の資材を提供するサービスセンター。お客さまは地元工事店など比較的小規模が多く、人間関係は深い。相場は、2010年に入社し、現在の厚木に配属。住設はともかく、管材を売るっていうのが最初はわからなかったが、工事店などお客さまの「べらんめぇ」調にはずいぶん慣れて、逆に楽しくなってきた。大学までやっていた野球選手としてのガッツじゃ負けないという。

Profile

相場 翔

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渡辺パイプ株式会社

水と住まいの事業 厚木サービスセンター営業担当

「来たなっ!チャンス」相場は、自然とほくそ笑む。

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100gほどのたった一個の継手(管をつなぐ部材)を、マンションの工事現場まで急いで届けてくれという電話だ。どう考えても〈お得〉な取引ではない。会社によっては、ガソリン代の無駄とも言う。しかし、相場はこれぞチャンスと直感した。

「もちろん工事ですから、設計図通りには 進んでいる。だけど、配管がこう来て、でも、ここに障害があって、ここで一個振りたい(曲げたい)みたいな…で、配管のその『継手』一個がほしい。それがないと工事が進まない。なんとマンション工事全体がそのために止まっちゃって、次の工事を待ってる職人とか、ダンプのドライバーとか下手すると何時間も暇になってしまう。監督はそれはそれはイライラしてて、現場にとっては、緊急事態なんですよ」。

つまり、〈一個〉の時のお客さまが一番急いでいる。だから、当社では万が一に備えて在庫も豊富に持っている。

相場は、あっという間に部品を探して、クルマを出した。現場に到着して走って行ったら、「おーっ、待ってたぞ」と、ちょっとしたヒーローだ。みんなの顔もほころぶ。もちろん相場もうれしい。

そして、相場はここが大事だと言う。作業できずにひたすら到着を待っている職人さんたちが、みんな自分を見ているからだ。「ワタパイの相場」という名前はここで現場のみんなに知られるだろう。そして、次の発注はこの中から出てくる。

「おまえだから買う」そんなお客さまが現れた。

そんな例はやはりあった。

「自分のお客さまの現場に配達で行ってまして、その下請けの職人さんとふと気が合って、『買ってやるから来い』となったんです。37くらいの若い方ですが、社長さんでした」。

そもそもは別のお客さまとの取引の中で、実際の現場同士の会話が必要となり、その方から電話で発注も入っていた。もちろん顔は知らない。だけど、「元気がいいな」と電話口で言われたことはあった。

「『おまえいいよ。相模原の方へ来いよ』って。『いゃ、遠いしなぁ〜。1時間近くかかるし』とは思ったけど、とうとう今、メインのお客さまになっちゃいました」。

初めてのときはかなりのインパクトだった。見た目、けっこういかつい感じで、職人さんたちも若くていかつくて、「おいおい、大丈夫かな…」と思ったけれど、ほんとにかわいがってもらっている。

「昨年の忘年会に初めて呼ばれて、『いろんな商社と付き合ってるけど、商社を呼んだことなくてお前が初めてだよ』って。凄く嬉しかったですね。そのとき来年も来いと前もって言ってもらえました」。

「取引は去年の夏に始まって、もう一気に5本指に入るくらいになりました。ただ、『すぐに持って来い』と…『お前うちのスタッフなんだから』って。逆にプレッシャー来ますね。ほんとにそうなのかと言いたいけど…つい、対応しちゃいます。確かめたんですが、歩いて10分以内に同業が3社はありました。で、他からはホントに買ってないらしいって…」。

思い起こすと、最初のヒットはそれこそ野球つながりだった。お互い大学までしこたまやっていたのだ。

「『マジでやってました。就職もそっちのけでしたね』と言うと、『うちの試合に出ろよと…』いやそこまでやっちゃうと休み全部つぶれるし…」と、今はまだお茶を濁している。「どうも、野球経験者が多くて、体育会系のノリも少しあるんですよ」。

相場は、現場の人と仲良くなることが多い。やっぱり、いかにすぐに対応しているかをお客さまがよく見ていて、「渡辺パイプ良いよ!」と代理人(発注担当)に言ってくれる、そういう流れが大事なのだ。一つ一つの細かな活動や言動がお客さまにつながっていることを、肝に銘じないといけない。

ピッチング・フォームは「気持ちよい段取り屋」

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日頃の仕事は、単品なら、お客さまから注文が来て、仕入先メーカーさまに発注するというシンプルな流れ。

一方、マンション建設やリフォーム、学校の改修工事、道路の本管工事といった物件については、その施工図を読み解いて資材のリストを作るのが入り口だ。管材はもちろん、部品からトイレやエアコンなどの製品まで相当の種類があり、やろうとすればマンション一棟建てる資材をすべてそろえることもできる。

その次が、リストに基づいた仕入先メーカーさまとの交渉。単なる発注で済むことはなく必ず最低限2社には当たって、手間がかかるけれど品質とコストのバランスを取る。ここはある意味駆け引きで、経験と交渉力が問われる。でも、メーカーの担当者によっては、パートナーという立場で一緒に手を組んでくれる強い味方でもある。それができてくると、スケジュール調整だ。工期半年の間に、基礎工事ならこれ、上物の建築段階ならこれ、内装ならこれと…工事の中身に沿って順番にジャストインタイムで納品する。しかも、主担当の水道工事関係を進めながら、住設業態・電材業態と連携したりバトンタッチしたりしていく、プロジェクトは長期だ。

また、担当顧客数は現在53社。水道工事関係の工務店・住宅系ビルダーが8割で、一人親方から、多くは家族経営あるいは職人入れて5人くらいの規模。こういった小規模顧客が多くて頼りにされることも多いし、何といってもフレンドリーなのが厚木の特徴だ。

キッチンの天板を間違えた。最初の発注に痛いミス。

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とはいえ、そううまくばかりいかないのも現実。引き継いだばかりのお客さまからキッチンを受注して、納品したはいいんだけれど、天板を間違えた。

「人工大理石なんだけど。オレ変更したよね。ファックス送ったよ」と社長。全然記憶がなかった。急ぎ帰って、過去の受信データを必死で探したら、あった。伝票の端っこに、小さい字でちょこっと…。「うわぁ〜、これは正直に言わないとなぁ…」。

お客さまは一人親方で、家づくりにこだわっては、ヨーロッパ調だとかいろいろなトライをしている。最初は、自分がどういう人間かを知ってもらわないと、と…でも、なかなかこっちに目を向けてくれなくて、行ってもいつも玄関先までだった。その何回か通った中で、一度任せると言われた今回が、初めての仕事だった。

「嬉しくて仕様をチェックして、毎日のように通ってたんですが…。結果、このミス。なんでって…」。

冷や汗をかいてる相場に、所長は言った。「このピンチはチャンスになるぞ」、直後に上司と謝りに行って玄関先で頭を下げた。そしたら、なんとその場で「わかった。じゃ…」と、違う現場の発注をくれた。キッチン・ユニットバス・トイレって3点セットで260万、デカかった。

「自分のミスで見落としていました、対応しますと…。そしたら、『そうか、やってくれるんだったら』って、終わり。で、その場で、『これをやってくれる。』って言うんで、『え!!』って驚いて」。

「振り返って、やっぱりきっちり謝ったからだなと、ごまかそうと思えばできたけど、そうしなかったのが良かったんだと思う。それ以降のお付き合いでも、仕事をもらえるようになった。それはそれ、現場はきっちり分けているし、かわいがられているって感じはなくて、クールですけれどね」。

営業って、ほんとに人間関係。やっぱり、人対人なんで。

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どう相場を知ってもらってどう信頼してもらうか。物件に対して私が提示した見積りが1000万、他も1000万だとじゃあどっち取るのか。決め手は人間関係、中でも信頼…こいつだから買うということだ。

「その中身って、むずかしいですね。ざっくり言うと、今言わんとすることを理解してあげること。こう頼みたいけど伝わらない、とにかくめんどくさがり屋が多いんでね。『それでわかんないのかよ』『まだ、オレのことわかってないのかよ』…阿吽の呼吸みたいな」。

「いや〜、そうは言ってももう一言欲しいんだよなぁ〜」と言いたい場合も多い。

何社できるかわからないけれど、そういう人が何人できるかによって、仕事も変わってくるだろう。ともあれ、お客さまと話すことは楽しい。

渡辺パイプについて詳しく知りたい方はこちら