釣果の先へ:小売、サービス、顧客の喜びを極めた「マイスター」たち

釣果の先へ:小売、サービス、顧客の喜びを極めた「マイスター」たち

釣果の先へ:小売、サービス、顧客の喜びを極めた「マイスター」たち

このストーリーのポイント

  • 釣りの知識だけでなく、記憶力・傾聴力・提案力を磨いた3つの専門性
  • マイスター認定は責任とともに、新たな挑戦の楽しさももたらす
  • 個性を認め合う社風が、一人ひとりの特技をチームの力に変えてくれる

釣具店「POINT」を全国に展開する株式会社タカミヤには、卓越した専門性をもつスタッフを認定する仕組み「マイスター制度」がある。レジ・接客・フィッシングなど、得意分野を活かすことで他者からの尊敬と責任、ますますのやりがいが生まれる。選ばれし称号を手にするまでの道のりと、仕事の喜びを3人のマイスターに語ってもらった。

PROFILE
株式会社タカミヤ

田中 遥菜

ポイント福山蔵王店 レジマイスター
2017年入社

takamiya-st04-02.jpg

釣りの知識がなくても、レジから生まれる絆がある。新規会員獲得数でエリアトップを維持し「お客様にメリットが伝わる声かけ」で多くの常連客からの信頼を獲得。休日のお菓子やパン作りが好き。


川本 國太郎

ポイント鹿児島谷山店 フィッシングマイスター
2020年入社

takamiya-st04-03.jpg

保育園のころから祖父と釣りに親しみ、今も休日のほとんどを海で過ごす。ブログでは釣果情報を発信し、初心者からベテランまで幅広くサポート。「釣り人を応援する」マイスター制度を体現する。


宮本 大樹

ポイント八幡本店ルアースタジアム 接客マイスター
2021年入社

takamiya-st04-04.jpg

高校時代は片道20〜30kmを自転車で釣り場に通うほどの釣り好きだった。持ち味は、型にはまらない接客で釣り場のような自然な会話を心がけ、お客様に「会いに来た」と言われる関係を築く。休日は温泉巡りでリフレッシュ。


「人」の温かさに惹かれて飛び込んだ

──皆さんがタカミヤに入社を決めた理由を教えてください。

田中 私の通っていた商業高校には事務職を目指す人が多かったんです。でも私は、簿記があまり得意じゃなくて。そんな時、釣りが趣味の父から「POINTはスタッフが明るくて元気で、礼儀もいい。スタッフ教育がしっかりしている会社だから」と勧められました。人と接することが好きだったので、この会社を選びました。

宮本 僕も商業高校で、ちゃんと簿記の資格は取ったのですが、それを活かそうとは思いませんでした。ただ、目立ちたがりな性格で、接客がしたかったんです。就活で求人票を見ていたら「POINTの会社がある!」と見つけて驚きました。3歳から釣りをしていて、高校時代は片道20~30kmも自転車をこいで釣り場に出かけていましたからね。偶然とは言え、もうここしかないと決めたので、他の会社は受けなかったです。

川本 私はいつか家業を継いでほしいと言われているのですが、「それまでは好きなことをやってこい」と両親に言われています。好きと言えば、私にとっては釣りですね。保育園から大学まで、暇さえあれば釣りをしていたので自然とタカミヤを選びました。

宮本 最初の新入社員研修の時から、本社の皆さんがすごく温かかったのは記憶に残っています。緊張していたのですが「大丈夫、大丈夫」って出迎えてもらえて、安心できる雰囲気がありました。同じく釣りが好きっていう人が多いので話も合いますし。

田中 そうですよね。社会人としての振る舞いとか、業務の流れだけを教えてくれるだけでなく、とにかく面倒見のいい先輩が多いので、仕事ができないうちもあまり不安を感じなかったです。

takamiya-st03-05.jpg

専門性を磨いた者に贈られるマイスターの称号

──マイスター制度のことを初めて聞いた時の感想は?

田中 入社当時は、まだマイスター制度がなくて、途中で「レジのマイスターを作ろう」という話が出たそうです。その時、エリアマネージャーから推薦を受けたのですが、一度は創設の話が止まったようです。うちには社長にあてて各社員がレポートを出す仕組みがありますが、そこで何気なく「レジマイスターの話はなくなったのですか」と質問したのです。そうしたら「田中さんのリクエストに応えて、作ることにした」と返事が来たんです。本当かどうかわかりませんが、そう言われると「じゃあ私は挑戦しなきゃ」と思いました。

宮本 僕も店長の推薦を受けたのがきっかけです。当時の店舗は、釣りに熱心なぶん、ご要望の激しいお客さまが多い地域だったんです。店員がお客さまからお叱りを受けることも、他のお店に比べるとだいぶ多いと思います。ただ僕は、いつも冷静なんです。まったく慌てることなく、こういう言葉遣いを快く思わないお客さまがいらっしゃるのかと学ぶわけです。こうした対応によって、自身の引き出しが増え、また自信をもって接客できるようになりますからね。

川本 フィッシングマイスターは、古くから制度として確立されていた、言わば釣りのプロ。私も店長から「そろそろマイスターを目指せばいい」と言ってもらったのがきっかけです。ムリだろうと思っていたのですが、ダメもとで受験したらまさかの一発合格でした。無欲の勝利だったと思います。

試験の内容は筆記試験のほか、実技の代わりとして釣果をブログで継続して報告しているかも審査されました。釣りの知識はもちろん、釣り場の保全活動など、マイスターと名乗る資格があるかも問われましたね。

田中 難しそうですね。レジの試験は、筆記とレジ打ちの様子を動画に撮って提出しました。

宮本 接客マイスターも同じで、筆記試験と接客している様子の動画ですね。僕は、型にはまった接客が好きじゃないので、合格するとは思っていなかったです。普段から「何かお探しですか?」と自分が聞かれたら、「大丈夫です」と断ると思います。だから、そんな話しかけ方はしません。

例えば、リールとか見ている方がいたら「そのリールいいですね」って、ちょっと釣り人目線でお近づきになるんです。イメージは、釣り場で出会った人と話しているような感じ。フレンドリーに接することを心がけています。

田中 その笑顔で話しかけられたら、悪いイメージを持つ人はいないんじゃないですかね!私のレジ係としてのこだわりは、アプリの新規会員の入会獲得数ですね。ずっとエリア内で1位を取り続けてきました。会計時にまだ会員になっていない方には、必ず声をかけるんですが「会員になりますか?」じゃダメ。「今日は4倍でポイントがつくので、いかがですか」とか「今日から使えるクーポンが出てるので、よかったら入りますか」などです。お客さまにとってメリットがあることを伝えれば振り向いてくれる方はいます。1日に20人近くの新規登録という記録も残っていますよ。

川本 とんでもない記録ですね。神ですよ。私は、マイスターと生活が一緒って感じかな。休みの日は基本的に釣りしかしていないのですが、フィッシングマイスターは毎月、餌代と遊漁船の乗船料に補助が出るんです。この制度は釣り人からしたら本当にありがたいです。

釣り場での学びは、お客さまへのアドバイスにも活かせます。釣果が出ないと悩んでいる親子に、魚種別の釣り方や使う仕掛けを説明したら、なんと翌日に「川本さんのアドバイスのおかげで釣れました!」とわざわざ報告してくれたんです。お役に立てたと実感が湧いて、嬉しかったですね。

takamiya-st03-06.jpg

「あの人はマイスター」だと見られる重圧とやりがい

──マイスターになってから、仕事に対する意識や姿勢に変化はありましたか?

田中 マイスターになったからには、いつも成果を出さなきゃっていう責任感はあります。ただそれ以上に、レジの技能もちゃんと評価していただいていることが自信やモチベーションにもつながっています。他の店から電話がかかってきて「ちょっとレジのこと聞きたいんですけど」と頼られるのも、マイスターだからだと思います。これは嬉しかったですし、やりがいを感じます。

川本 フィッシングマイスターは、会社の広告塔みたいな感じです。費用の一部補助をいただく以上、結果を残さないといけないというプレッシャーは正直言ってあります。でも私の釣果を楽しみにしてくれているお客さまもいるわけです。プレッシャーが、逆に成長につながっているとも思いますね。

宮本 マイスターという肩書きに恥じない接客とはなんだろう。常に考えていますね。今はお客さまからご指摘やお叱りを受けるようなことは絶対ないようにしたいです。それがマイスターとして模範を示すものの責任だと思います。一方でもっと目立ちたいという気持ちも強くなりました。店舗の「顔」として、声をかけるタイミングや回数も増やしています。

田中 かっこいいです。何か目指すものがあること自体、仕事が楽しくなりますよね。マイスターを目指すだけでも勉強の習慣になるし、目標とかやりがいにもつながります。

川本 あとは他のマイスターの方々に負けたくないですよね。皆さん、個性がすごいんですよ。現在のマイスターは5種類あるのですが、POPマイスターが作ったPOPなんて、デザイナー専門職が作ったぐらいのクオリティです。

宮本 本当に餅は餅屋です。僕、一度だけフィッシング・マイスターの試験を受けたのですが、現マイスターの方々の知識がすごすぎると実感しました。もう魚と会話できるんじゃないですか。

川本 そんなことないですよ(笑)でも同じマイスターでも上には上がいますよね。本当に刺激になります。でも、先ほどお話ししたような「釣れました!」って教えてもらえる機会が増えたのも、マイスターになったからだと思うんです。マイスターは、広告塔のような役割も果たしていますから。

田中 とても分かります。お客さまにとってもマイスターは親しみやすいのかもしれませんね。あるお客さまが久しぶりに来店した時に「お久しぶりです」と声をかけたら「覚えていてくれたの?」と驚くと同時に、喜んでもらえたのが印象的でした。私はレジですから、決して釣りに詳しくはないのに、わざわざ釣果の写真を持ってきてくださるようになりました。レジにいながら、できるだけ顔と名前を紐づけて覚えて、次にお名前を呼ぶと嬉しそうに反応してくださる方は多いですね。

宮本 私もたまたま応援に行ったお店で接客した家族連れの方に接客を気に入っていただいて「普段のお店はどこですか?」と聞かれたんです。少し離れたお店だったのに、わざわざ会いに来てくれるとは思いませんでした。私と会うために通う店舗を変えてくれたそうなんですよ、驚きました。釣り人って、話を聞いてくれる人が好きなんですよ。自慢したり、経験談を語ったりしたあとに共感してくれる人が好き。だから、こちらは聞くのが一番大事だと思っています。

takamiya-st03-07.jpg

知識とスキルはあとから身につけられる

──最後に、これから入社してくる後輩たちへメッセージをお願いします。

田中 釣りの知識がなくても、全然大丈夫です。それでもこうやってマイスターになる道はあるし、お客さまにも頼ってもらえます。人と接することが好きなら、活躍できる環境だと思います。

川本 男性スタッフにも釣り未経験の人は結構いますよね。「今から覚えたい」とか「接客が好きだから入社した」という意見も多いです。先輩スタッフやお客さまもいろいろ教えてくれる環境なので、素直に受け入れる人なら成長も早いはずですよ。マイスターじゃなくてももちろん楽しいけれど、やっぱりマイスターとしてみんなから認められる存在を目指してほしいですね。

田中 若い年次の社員でも挑戦する人はどんどん前向きにトライしていますよね。年齢や経験の問題じゃないです。

宮本 いろんな個性がぶつかりあって、チームができあがります。入社後にいくらでも勉強できるわけだから、まずはフレッシュな気持ちで飛び込んできてほしいです。他人に貢献し、やりがいを感じたい人や自らのスキルを磨きたい人なら輝けます。私もこの会社に入って本当に良かったと思っています。

TAGS
SHARE