キャリアの交差点 — 店舗のエースから、エリアをまとめるマネージャーへ
キャリアの交差点 — 店舗のエースから、エリアをまとめるマネージャーへ
このストーリーのポイント
- 釣りと接客という身近な経験から「人と関わる仕事」を志して入社
- 店舗の立て直しや新店立ち上げを通じて、“チームをつくる面白さ”を知った
- 対話を大切にながらチームをまとめる、私なりの現場目線のリーダーシップ
タカミヤの店舗を訪れたことのある人は「雰囲気が明るい」という。スタッフの笑顔で満ちているのも印象的だ。ただし、それは自然に生まれるものではない。店を預かる店長や、複数の店舗を統括する地区長のリーダーシップによる影響も大きい。新店立ち上げや店舗の立て直しを経験する中で、チームづくりの面白さに気づいた「完璧なリーダーじゃなくてもいい」という言葉からは、現場を大切にするタカミヤの文化が伝わるはずだ。
株式会社タカミヤ
佐藤 哲成
小売事業部 2013年入社

入社後は販売スタッフ、店長代行、店長を経て、2024年より地区長(エリアマネージャー)に就任。九州はもちろんだが、関東から中国、四国と赴任する先での生活を楽しんできた。休日は一人で飲みに出かけ、地元の人と話しながらその土地の雰囲気を味わう。
「釣り」と「接客」、自分らしさの原点に気づいた学生時代
出身は大分県で、父が遊漁船を営んでいたこともあり、小さなころから釣りは身近な存在でした。中学生くらいまでは休日に船に乗る機会も多く、海や釣りが自分の生活の一部になっていたように思います。といっても、タカミヤを選んだのは、特別に釣りが好きだからという理由ではありません。
大学進学をきっかけに熊本で一人暮らしをスタート。学業以上にアルバイトに熱心でしたが、飲食店でお客さまとコミュニケーションをとる楽しさを知り「人と関わる仕事がしたい」と、思うようになりました。就職活動中に釣具店「ポイント」を展開するタカミヤという会社を知り、お店の明るい雰囲気に惹かれて、興味を持ちました。内定をいただいた時は、「自分が選んだ環境といただいたご縁を大切にしよう」と思い、すぐに入社を決意していました。
内定者アルバイトとして入社前に、実際に店舗で働く機会があったのは幸運でした。釣り具店で働くのは初めてでしたが、すぐになじめました。スタッフのみなさんが明るく、物事をはっきり伝えてくれる方ばかりで、私に合っていたんだと思います。居心地のいい環境だなと感じました。ただ入社当初は、今思うと学生気分が抜けきらず、目の前の仕事をこなすだけで精一杯でした。
そんな自分が変わるきっかけになったのが、近隣店舗のリニューアルオープンです。全国から集まった先輩方と一緒に準備を進める中で、本気で仕事に向き合う姿勢を肌で感じました。特別に言葉で教えられたわけではありませんが、どんな作業にも全力で取り組む姿を見て、「自分もこんなふうに働きたい」と思ったんです。その経験を境に、少しずつ意識が変わっていきました。
店舗の雰囲気を変えたのは、“対話”だった
意識が変わると、周りからの評価も変わり、少しずつ任せてもらえる仕事が増えます。販売スタッフとして経験を重ね、店長代行を経て、店長を任せていただくようになりました。立場が人を育てるなどと言いますが、私も役職とともに自分の意識や責任感が自然と高まっていったように感じます。
印象的だったのは、店長2年目を迎えたころに担当した店舗での経験です。異動してすぐに感じたのは、それぞれのスタッフは一生懸命に働いているものの、どこか歯車がかみ合っていません。店長経験の浅い自分なりに、「この雰囲気はタカミヤらしくない。店舗全体としての一体感をつくる必要がある」と感じたのです。
そこで実践したのは、メンバーとの対話を増やすことです。日々の業務の中で会話する時間を増やし、考え方や得意分野を知るようにしました。特別な方法ではないかもしれませんが、意見を聞きながら少しずつ方針を共有するうちに、スタッフ同士の会話も増え、徐々に前向きな空気が広がる手ごたえがありました。数か月後には、売り場にも活気が戻り、売上にも表れるようになったんです。スタッフと本気で向き合う気持ち、そして対話の重要性を改めて実感しました。

四国の愛媛県初出店という挑戦。未開拓の地で感じた手応え
2021年に、四国の愛媛県で初めての店舗が松山へ出店されると決まり、新店舗の立ち上げの店長として赴任しました。周辺に店舗がないということは、現地で採用した新しいスタッフに、いちからレジ操作や社内システム、会社の考え方などを教える必要があります。近くの店舗から応援を頼むわけにもいかないのです。限られた準備期間の中で、未経験の人材を中心に体制を整え、仕事のやり方も覚えてもらわなくてはなりません。
そこにコロナ禍が重なり「3密(密閉・密集・密接)」を避けられる屋外レジャーとして人気が高まり、釣り具を求めるお客さまが急増したため、新店は初めから大忙しです。感染対策の徹底というミッションも重なり、オープン準備から営業が軌道に乗るまで息つく間もありませんでした。こうした状況下で、私がスタッフに伝え続けたのは「笑顔でお客さまと向き合う姿勢」です。専門的なスキルや細かい作業の正確さも必要ですが、それ以上に売り場ではとにかく元気に、そして、お客さまを第一に考えることが大切です。ただ、店長が方針を一方的に押しつけるだけだと、どうしても摩擦が生まれます。そこで個別に「この店はこうありたい」という私の考えを、時間と回数をかけて伝えるようにしました。こうした目線を合わせるプロセスは、店舗の立て直しを経験し、チームづくりの重要性を実感したからこそ生まれたものです。私自身もすべての業務を完璧にこなせるわけではないと、自分を開示して、気持ちの部分でチームをまとめることを意識したのです。
スタッフとの距離は変わっても話しかけられやすい人でありたい
松山の新店がようやく軌道に乗ったころ、広島へ異動になりました。他の社員よりも早く、平均2年で異動を経験し、気づけば勤務した店舗は10近くまでになりました。色々な場所で、さまざまなお客さまと出会い、多くのスタッフと働くことを楽しみにしていたので、次はどんな店舗なのかと上司に聞いたところ、複数の店舗を統括するエリアマネージャー(地区長)になるように言われたんです。驚きもありましたが、それ以上に「期待に応えたい」という思いが強かったですね。
現在は、兵庫県と鳥取県にある合計7店舗が私の担当です。自分がこれまで未経験のエリアなので、日々新しい挑戦の連続です。売上規模も関わるスタッフの人数も格段に大きくなるぶん、これまで以上に責任を感じています。1か月の中で巡回スケジュールを組み、できるだけ偏りが出ないように店舗を回るのが普段の仕事です。同じ店舗に顔を出すのは、平均すると2週間に一度程度になります。
店長という立場ではなくなりましたが、現場のスタッフと直接会話することを大切にしています。私と各店長のやり取りももちろん大切。ですが、店舗全体の雰囲気や小さな変化をつかむには、スタッフとの対話が欠かせません。だからその日に勤務している全員に声をかけるように意識しています。同時に話しかけづらいと思われないように、笑顔を浮かべるなど基本的なことを心がけています。
「店がいい状態かどうか」を判断する時に基準としているのは、お客さまからどれだけ支持をいただいているか、です。インターネットで手軽に商品が買える時代だからこそ「困ったらこの店に聞いてみよう」「このスタッフに相談したい」と思って足を運んでくださるお客さまの存在は、大きな差を生むのです。そして私が考える、お客さまから支持していただくための第一歩は、整理整頓や清掃といった当たり前の習慣です。これらを徹底するだけで、スタッフのモチベーションが向上することも少なくありません。小さな改善の積み重ねが、お客さまからの信頼につながり、店舗全体の雰囲気づくりにもつながると信じています。だからトイレや店先の掃除も、スタッフに指示命令するだけが仕事ではなく、まずは率先して自らやることが大事です。

お客さまに近い場所で、成長を重ねていく
私が店長や地区長として成長できたのは、多くの先輩や仲間に支えられてきたからだと心から思っています。初めて店長になった時に、声をかけてくださった先輩の言葉は、今でも大切にしています。判断に時間がかかっても、一度決めたことは責任を持ってやりきる。「ブレるな」と言われました。店長はまた、次の店長を育て、そして次をまた育てる役目があります。そしてタカミヤは、全体的にその習慣が根づいていますが、どの店舗でも「次を育てる」意識はもってきました。以前の部下に会うと、頼もしさを感じることがあります。人の成長に関心を持ち続けられるのもタカミヤの強さです。
今後の目標を聞かれると困るのですが、あまり遠い将来のことよりも、目の前の役割にしっかり向き合い、結果を出すことに集中したいと考えています。私は、釣りに詳しかったわけでも、特別な知識があったわけでもありません。ただ、人との関わりや現場が大好きで、ここまでやってきました。人口減少が進み無人店舗も増えると思いますが、環境が変化しても、お客さまに一番近い場所で働きたいという気持ちは、これからも変わらないと思います。
これから一緒に働く方には、特別なスキルよりも「元気」と「やる気」を持っていてほしいと思っています。接客の仕事は、毎日が同じではありません。来店されるお客さまは、いつも一人ひとり違ったものを求め、対応次第で満足度も変わります。釣りは娯楽であり、楽しむために来店される方が多いからこそ、働く私たちに前向きな気持ちがあるのは本当に大事なことです。

