育児はキャリアの停滞期ではなく、スキルアップの期間。3度の育休を経験し、時短で働く店長となるまで。
育児はキャリアの停滞期ではなく、スキルアップの期間。
3度の育休を経験し、時短で働く店長となるまで。
このストーリーのポイント
- 面接で語った夢を笑顔で聞いてもらえたことが入社の決め手
- 子育てとの両立で歯がゆさを味わう期間を、自ら学びの時間と切り替えた
- 3度の産育休を経て、自ら志願して店長へ
3COINSを展開する株式会社パルには、出産や育児といったライフステージの変化を経ても働き続ける社員が数多くいる。3度の産休・育休を取得し、副店長として長く現場を支えたのち、店長に復帰したママ社員。その歩みは、ライフステージが変わっても、自分らしくキャリアを築いていけることを物語っている。
株式会社パル
佐藤 悦子
3COINSカンパニー
3COINSアトレ新浦安店 店長
2009年入社

新卒入社後、3人の子どもの出産・育児を経験し、2026年3月に店長として復帰。休日は「完全にインドア派」で、子どもたちとYouTubeを観たりゲームをしたりしながら、にぎやかな家時間を楽しんでいる。好きな音楽を聴きながら家事をしたり、子どもたちとの会話や遊びを楽しんだりする時間が癒し。
誰もが責任者になれる。その社風に惹かれて入社した
学生時代はCDショップでアルバイトをするほど音楽が好きで、そのまま就職したいと思っていました。ところが就活アドバイザーに、レコード会社を勧められた私は「それは違います」と即答していました。そこで気づいたのは私が好きだったのは、ショップの棚いっぱいにCDが並んでいる光景だったこと。お客様が欲しがっているモノをお渡しする瞬間に私の幸せがあるのだと気づいて、雑貨店をはじめとする小売業を中心に就職活動を始めました。
はじめは3COINSに対してそれほど関心が高かったわけではありません。偶然、新卒向けの採用サイトで「拝啓 社長殿」という制度があることを知りました。若手でも、自分の意見を経営陣に伝えることができる。そして、認められれば自分が見つけてきた商品や考えついたアイデアをブランド化できる可能性があると聞き、ここにはやりたいことが叶う環境があるように感じたのです。
最終的な決め手は採用面接です。「あなたがお店を持つなら、その店は何色ですか」と質問され、私は「レゴ色」と答えました。赤も青も黄色も集まっているのに、不思議とまとまって見えてワクワクする、そんなお店にしたいと夢中で話す私を、面接官の方は微笑みながら聞いてくれました。夢を語ってもいい会社って素晴らしい、そう感じた私は入社を決意しました。

不完全燃焼のまま産休へ。学びのスイッチを入れた姉の一言
最初に配属されたのは八重洲店でした。3COINSでは、社員とアルバイトスタッフでそれぞれ役割はありますが、立場に関係なく、お互いに学び合える環境があります。私が社員だからといって、アルバイトスタッフの方が下になるわけではなく、むしろ私より商品や店舗について詳しい先輩たちから、たくさんのことを教えてもらいました。入社したばかりの頃は、周りのスタッフに支えてもらいながら、少しずつ仕事を覚えていった感覚があります。
入社3年目で副店長、その翌年には接客面でのさらなる向上を期待され、新浦安店の店長を任されました。口角を上げて接客しようと、先輩に教わったことをまず素直にやってみる姿勢を評価してもらえたのだと思います。自分自身でも接客術には一定の自信がありました。しかし、店長として店舗全体の接客を良くしていくには、自分の接客方法を伝えるだけでは十分ではないと感じました。スタッフ一人ひとりは決して冷たい人ではないのに、店頭ではいつもの人当たりの良さが出ません。私の真似をするようにとだけ伝えても、人の心は動かせないと知った瞬間でした。
どうすれば店舗全体の接客がより良くなるのか、試行錯誤を続けている中で第1子の妊娠が分かり、やがて産休・育休に入りました。当時は、店長としてまだまだ挑戦している途中だったこともあり、周囲に申し訳なさを感じる気持ちもありました。そんな私に対して、当時の上司は心から喜んでくれました。その温かい言葉が、今でも印象に残っています。
育休から復帰後は、同じ店に時短勤務の副店長として現場に戻りました。しかし、子どもの都合で急に休むことや、早く退勤することへの申し訳なさを感じる日々でした。また、1年の不在でも、ブランドの方針や店舗での取り組みにはさまざまな変化があり、復帰後は新しい環境に慣れるまでに時間がかかりました。そうした変化についていかなければという思いもあり、焦りを感じることもありました。
それに、私が不在の間に店舗を支えてきた店長の姿を見る中で、「自分ももう一度、店長として店舗に関わりたい」という気持ちが強くなってきた為、復帰後もずっと店舗の2番手として働くことに、焦りや不安を抱えていたのです。
ある日不安を打ち明けたら、姉がこう言いました。「仕事をしながら子どもを育てているのは、それだけで十分すごいこと。今の自分に合う働き方を考えてみたらいい」。そんな言葉をもらい、自分自身のこれからの働き方について考えるようになりました。それでも、私はずっと店舗で働くことが好きでした。それなら、この場所のまま私を生かす方法を考えればいい。そう思い直したときに、目の前の状況が学びの機会に見えてきたんです。いつか店長に戻るときのために、今のうちに吸収しておこうと決意しました。

「自分が何をやるか」から「いない時間に店がどう動くか」へ
副店長として働く中で、さまざまな店長と一緒に仕事をする機会があり、それぞれの店長から、店舗の見方やスタッフとの関わり方など、多くのことを学びました。そして、自分とは異なる考え方や仕事の進め方に触れるたびに新しい発見がありました。環境基盤を整えるのが得意な店長、スタッフを諭すのが得意な店長、数字をもとに具体的な課題を示す店長。自分には絶対にない引き出しを持つ人たちに、次々と出会えたことで、少しずつ自分の中にできることや考え方の幅が広がっていきました。
なかでも今でも活きているのが、仕組み化する発想です。店内をきれいに保つために清掃を習慣づけたいと考えたとき、時間があるときにやろうと流してしまいがちなものを、「月曜の朝9時にやる」とスケジュールに組み込む店長がいました。やると決めれば、やらないという選択肢が消えるのです。清掃を続けるようになってから、私も後回しにしがちな作業ほど、先に時間を確保するように変えました。
3人目の育休から復帰した頃、これまでの働き方を見直す必要性を感じるようになりました。上の子が小学校に入学し、これまでとは生活リズムも変わる中で、仕事と家庭の両方を大切にしながら働くには、限られた時間をより意識して使っていくことが必要だと感じたのです。
店舗の状況も変化する中で、これまでと同じ働き方を続けるのではなく、限られた時間の中でどうすれば店舗に貢献できるのかを考えるようになりました。
そこで従来の「私が何をやるか」という発想から、私がいない時間に店がどう動くかを設計する発想に切り替えたのです。これまでより端的に、取り組む順番まで決めて指示するようにしました。まだ不慣れなスタッフに過度な要求をしても難しいため、それぞれの経験やスキルを見極めたうえで、任せる範囲を切り分けました。うまくいかなければ、最終的には私がフォローしますが、それでも誰かが前に進めたものを手直しするなら、はるかに早い時間で終わらせられます。
もちろん任されるスタッフ側の負担も心配しました。社員がいない時間の責任者を任されるのは、とくに経験の浅い人には重荷になるはず。ところが実際には、忙しいにもかかわらず、自らの成長を楽しむように働いている頼もしい姿がありました。任せ方によっては、その人のポテンシャルを引き出すことにもなると実感できました。

子育てと両立しながら、店長として活躍する
スタッフが、これまでよりも気持ちの良い接客を行うという、かつての私には実現できなかった店舗づくりが、少しずつできるようになっていました。その要因は、信頼関係だと思っています。以前は、信頼を深める前に自分の考えを伝えることに一生懸命になっていましたが、スタッフと一緒に店舗を支える経験を重ねる中で、少しずつ互いの理解が深まり、信頼関係につながっていったのだと感じています。
そして私は、自ら手を挙げ、13年ぶりに店長として働くことを決めました。副店長としてさまざまな経験を重ねる中で、自分なりの店舗づくりに少しずつ自信を持てるようになり、「もう一度、店長として挑戦したい」という気持ちが芽生えたのです。家庭との両立についても、自分なりの働き方を見つけられるようになり、新たな一歩を踏み出すことができました。今は、自分ですべてを動かすのではなく、スタッフに任せながら、必要なときにフォローすることを意識しています。以前は「こうしてほしい」という自分の感覚をそのまま伝えてしまうこともありましたが、今は、相手が迷わず動けるように、できるだけ具体的に伝えるようになりました。
例えば「掃除しておいて」と伝えるのではなく、「この棚を、ここまできれいな状態にしてほしい」と、何をどこまでやってほしいのかを明確に伝えます。任せるだけではなく、相手が動きやすいように伝え方を工夫することも、店長として大切な仕事だと考えるようになりました。
実際に時短勤務で店長を務める中で、限られた時間でも工夫次第で店舗運営と家庭との両立ができることを実感しました。働き方が変わっても、これまでの経験を活かして新しいことに挑戦できる。私自身がその一例となることで、これからキャリアを考える人にとって、働き方の選択肢の一つとして感じてもらえたらうれしいです。
出産以外にも、介護のようにライフステージの変化は誰にでも起こり得ます。そうしたときでも、仕事で活躍できる選択肢を増やし、その人たちを支える仕組みを作る力になれたらと考えています。育児の期間はキャリアの停滞期と思われがちですが、スキルアップに充てることもできます。私自身、そこに気づくまでには遠回りをしました。
3COINSには、「できない理由を考えるより、できる方法を考えよう」という文化が、そして、パルには「出る杭を引き上げる」という社風があります。時短勤務という働き方でも店長に挑戦できたことは、そうした環境があったからこそだと思っています。私自身の経験を通して、これからもさまざまな働き方やキャリアの可能性を示していきたいと思っています。

