成長への新たな活力のために、 中途採用人財を支え、育てていく。
成長への新たな活力のために、
中途採用人財を支え、育てていく。
このストーリーのポイント
- 中途採用人財が感じる“些細なストレス”を取り除く
- “どんな質問をしてもいい”リーダーを、職場に配置
- 中途採用でもキャリアアップのチャンスは公平に
三井住友海上がこの春からスタートした新たな取り組みが注目されている。中途採用人財を組織に受け入れ、早期に戦力化する仕組み「オンボーディング」だ。「入社後の育成」は中途採用人財にとって大きな関心ごとである。この新しい仕組みを推進する社員2人が、そこに込められた「思い」や「期待」について語り合った。
丸山 紀子
人事部 部長(能力開発担当)
結婚を機に前職を退職。出産・育児を経て2004年に三井住友海上岐阜支店に派遣社員として勤務。2006年に社員に転換。2016年にポストチャレンジ制度(社内公募制度)を利用して、本社営業推進部に異動。営業企画部を経て、2020年に人事部にチーム長として異動し、2022年より現職。
日西 峰夫
人事部 能力開発チーム 課長代理
2008年新卒で入社し、埼玉西支店に配属。2016年、本社営業推進部に異動。2021年、人事部に異動し現在に至る。
職場の“お作法”が意外なストレスの原因に
──金融系企業の場合、中途採用はさほど多くないという印象がありますが。
丸山 そうかもしれませんね。しかし当社の場合、中途採用人財は比較的多いと思います。また、管理職として活躍中の社員も少なくありません。
日西 丸山さん自身も派遣社員として当社に勤務したのが始まりですよね。
丸山 私は専業主婦をしていた30代後半に派遣社員として当社に勤務しました。金融業界で働くのは初めてでしたし、まさか将来、自分が部長になるとは想像もしていませんでした。私のそうした歩みを振り返っても、当社では中途採用だからといってハンデがあるわけではなく、キャリアアップのチャンスは誰にでも開かれていることがわかると思います。本当にいい会社だなあというのが、私の素直な感想です。
日西 まさに異色のキャリアです。入社当初は苦労されたのでは。
丸山 まったくの未経験で入社しましたから、右も左もまるでわかりませんでした。しかし当時の上司をはじめ、周囲の皆さんに支えてもらって何とか頑張れました。やはり新卒採用でも中途採用でも、職場のサポートが一番重要です。
日西 特に中途採用の場合、“即戦力”と期待されることが重荷かもしれません。経験を重ねている分、優れた専門性を身につけていると思われますし、「仕事はできて当たり前」とも見られます。職場の人に頼りたくても、周囲は年下が多いことなどもあり、相談しにくく、一人で抱え込んでしまう心配もあります。
丸山 その点は中途採用に限らず、社内の異動でも同様では。
日西 そうなんですよ。私も入社以来営業で経験を積んできて、36歳にして人事部という、これまでとまったく畑違いの部署に異動になりました。同じ会社であっても、まさに転職したような感覚でした。そして直面したのが、「これは一体だれに聞いたらいいのか」ということでした。些細なことですが、クリアファイルが必要だけど、どこにあるのかわからない。また、システムにログインできないけど、どうしたらいいのかわからない。そこで働く人にとっては当たり前すぎることが、異動したばかりの人にとっては、大きな壁になることもあります。
丸山 どの職場にもちょっとした“お作法”のようなものがありますが、それが意外に大きな壁になるわけですね。周りの人は「そんなことがわからないの?」と思うかもしれないけれど、本人にとっては大きなストレスにつながって、結果的に本来のポテンシャルを発揮できなくなる可能性さえあります。そうした壁を取り除いて、成長を支援しようという仕組みが「オンボーディング」です。
“オンボーディングリーダー”があらゆる質問に答え、サポートしてくれる
──「オンボーディング」の仕組みについて、簡単に教えてください。
日西 中途入社や人事異動で新しく職場に加わった社員が、1日も早く新しい職場に溶け込み、活躍するために、サポートする役割です。オンボーディングリーダーは、育成計画の策定や業務に関する相談やアドバイス等、新しく職場に加わった社員を支え、活躍を後押しします。
丸山 上司はリーダーに、業務として「オンボーディングリーダー」の役割を任命します。つまりリーダーは業務として新しいメンバーの支援に取り組むわけです。
日西 新しいメンバーが部署に溶け込むには「職場」と「仕事」になれ「成果をあげる」ことが必要となります。それを阻害する大小さまざまなストレスを取り除くことで、本来持っているポテンシャルが発揮しやすくなります。
丸山 もちろんこの仕組みができる前にも、どんな職場にも“育成担当“のような社員はいました。それを「オンボーディングリーダー」として明確に定義づけし、ミッションを業務として定めたわけです。「わからないことは何でもこの人に相談すればいい」という存在がはっきり決まっていることは、とても大きな安心感につながると思います。
日西 私が人事部に異動して戸惑っていたときは、まさに丸山さんがきめ細やかに声をかけてくださり、気遣ってくれました。当時は「オンボーディングリーダー」という言葉はなかったですが、今、振り返って考えてみると、あのときの丸山さんの存在がまさに理想の「オンボーディングリーダー」だと思います。「オンボーディングリーダー」は、新しい人財をチームに溶け込ませ、即戦力へと育てていくプロデューサーのようなものだとお聞きしたことがありますが、まさにその通りだと思います。
丸山 どのような社員が「オンボーディングリーダー」を担っているのですか。
日西 職場に2年以上在籍し、上司とのパイプ役として、職場のことを理解している社員が担っています。現在、全国に25名が「オンボーディングリーダー」として登録されています。
組織カルチャー変革の起爆剤としての中途採用
──新卒採用に比べて中途採用へのサポートはどうしても手薄になりがちです。その点「オンボーディング」は非常に意義深い取り組みといえます。
丸山 専門性を有した即戦力というイメージからか、従来、中途採用を“育てる”という考え方は希薄でした。しかし当社では今後、新卒採用と同じぐらい、中途採用の育成に力を入れていく考えです。当社ならではの独自の取り組みではないかと、自負しています。
日西 もともと中途採用は豊富な経験、実績を有しているから採用されたわけです。「オンボーディングリーダー」が小さな壁を取り除いてあげることによって、中途採用が本来のポテンシャルをいち早く発揮できるようになれば、これ以上ないWin・Winの関係が築けると思います。
丸山 多様性が企業の重要なキーワードとなった今、これからは専門人財以外の中途採用にも力を入れていくことになるでしょう。イノベーションを支える多様な考え、価値観を持った社員が増えていくことで、会社にもきっと新しい活力が生まれるはずです。
日西 当社のユニークな制度の一つに「異業種交流セルフチェンジプログラム」があります。異業種交流型の社外研修・ワークショップでの学び体験(越境体験)を通じて、新たな視点・気づきを得たうえで、自分自身の仕事における創意工夫や、自立的なキャリアビジョンの実現に向けて、新たなチャレンジへのきっかけを支援するプログラムです。会社という同質的なコミュニティに閉じこもっているのではなく、社外で働いてみることで新たな刺激経験を得ようという狙いがあります。これが“内から外へ”出て刺激を受ける仕組みなら、中途採用は外から新たな人財が入ってきて、今いる社員に刺激を与える、“外から内へ”という仕組みです。“内から外へ” “外から内へ”といったチャレンジによるシナジー効果で、従来の社内カルチャーに変革を起こし、社員全員が成長していくことを目指しています。
──最後にこれからの中途採用に向けてメッセージをお願いします。
日西 当社の魅力の一つが、「チャレンジによる失敗はGood!」の会社であるということです。何かに挑戦して失敗したとしても、それで終わりではありません。失敗を糧にして次の挑戦に立ち向かえる会社です。中途採用の場合、得てして「失敗できない」と思いがちですが、当社ならそんなことで萎縮する必要はありません。ぜひ失敗を恐れず挑戦していただけたらと思います。
丸山 まさか私が部長になるとは思わなかったとお話ししたように、当社では中途採用だからといってハンデキャップはまったくありません。ぜひ高い志、大きな夢を持って入社していただきたいと思います。小さくまとまらず、何か成し遂げたいという強い思いに期待しています。