プロジェクトストーリー:無電柱化による美しい街づくりを実現する、 ミライト・ワンの技術

プロジェクトストーリー:無電柱化による美しい街づくりを実現する、 ミライト・ワンの技術

プロジェクトの概要

無電柱化は都市景観の向上、事故の防止、バリアフリーなど多様な視点から日本のさまざまな街で行われている。火災などの防災上の理由、また地震や河川の氾濫などの災害時に、電柱の転倒の二次被害を防ぐ目的もある。ミライト・ワンは、そうした無電柱化工事を数多く手掛けてきた高い実績をもつ。今回、京都有数の花街・先斗町で実施された同工事は、日本で初めての工法が採用された注目すべきものだった。

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事業目的
無電柱化事業

施工場所
京都市中京区石屋町~柏屋町

工程
道路延長=490m、道路幅員=1.6m~4.4m・対象電柱=18本・地上機器数=30基

「先斗町方式」とは?

道路の両側に配置する小型ボックス内に電線を集約する工法で、ガス管や水道管など他のライフラインとの共存が可能になる。無電柱化の新たな手法として国交省で推進され、地上機器の地中に設ける電力桝のサイズも縮小できるため、地上機器設置の際の負担の軽減にもつながる。

なぜこの工法を?

先斗町通りは道路の幅が1.6~4.4mと非常に狭く、その中に水道やガス等のライフラインが埋設されていた。通常の工事ではライフライン等占有物件の移設を行い、電線共同溝の設置スペースを確保するが、先斗町通りでは幅員の狭さがネックとなり、従来の整備手法で行うことが困難だった。

STORY01
日本初の「低コスト工法」による無電柱化工事

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「先斗町通り」は京都市中心部の中京区に位置し、鴨川と木屋町通りの間にある約490mの南北の道路。先斗町は京都市内有数の観光名所である京都五花街の一つであり、京都市市街地景観整備条例に基づく「界わい景観整備地区」に指定される由緒ある街だ。その先斗町で無電柱化が持ち上がったのが2013年。景観対策のために、通りの店主らが無電柱化の実施を願い、京都市に要望を出して工事が決定した。

しかし、工事に際して難題があった。先斗町通りは最小1.6mと道路幅が極端に狭いため、電線すべてを埋め込むスペースが足りない。また電柱・電線をなくすには、地上に特殊な箱(通信桝)の設置が必要だが、先斗町通りには十分なスペースがなかった。それらの課題を解決したのが、2015年に国交省が開発した、電線を集約して小型ボックスに入れて地中に埋設する工法。通信桝の小型化にも成功した、この新しい低コスト工法をミライト・ワンが受注し、「先斗町式」の電線共同溝工事が2017年に始まった。

STORY02
制約の多い繁華街ならではの障害に直面した

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先斗町通電線共同溝工事は、日本初の工法による国交省のモデル工事ということもあって、自治体や大学、関係業界から多くの見学者が来訪したほか、NHKも取材に来るなど注目を集めた。ミライト・ワンにとっても新境地となるこの工事を現場代理人として任されたのが、入社9年目の中西広基だ。若手社員に新しい工事のノウハウを学んでほしいという期待を込めての起用だったが、「最初に話を聞いたときには、どちらかというと心配や不安のほうが大きかったんです」と中西は振り返る。

工事自体の難しさに加え、先斗町通りは昼夜問わず人通りの多い繁華街。店舗の営業時間を考慮し、工事は夜中の1時~朝10時での深夜帯での実施を余儀なくされた。また繁華街とはいえ居住者の方もいることから、深夜の作業は騒音への配慮も必要だった。だが中西は、「私は学生時代から都市景観に興味があり、無電柱化工事は街の景観対策や防災が目的ですからやりたい仕事という気持ちはありましたし、次第にモチベーションは高まりました」と監督業務に前向きに取り組んでいった。

実際に掘削してみると、やはり道路幅員が1.3mほどの狭い環境で配管の新設を行うため、ガス管や水道管など他の埋設設備と輻輳する場面が多くあった。移設工事の施工調整を行う必要が多々生じるなど、施工前には分からなかった課題が、工事開始後に判明することも少なくなかったという。

「他社との調整を丁寧に行いながら、どう対処していくかは監理技術者である上司と相談して決めていきました。意見が食い違うときもありましたが、所長は私の意見にもしっかりと耳を傾けてくれて、考えをすりあわせながら工事を進めていきました」と中西。様々な障害を取り除きながら、着工から約2年が経過した2019年10月。先斗町通りの北側半分の電柱と電線は視界から消え去り、通りの景観は大きく変わることとなった。

STORY03
住民の方々の言葉がモチベ―ションにつながる

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無電柱化工事が終わった区間の先斗町通りは、以前よりも歩きやすくなり、通りから見る空も広くなったように感じる。「たまたま私が現場で確認をしているときに、地元の店主の方が『目の前の電柱がなくなって本当にスッキリしたし、通りも広くなった。感謝しているよ』と言ってくださって。とてもうれしかったですね」と中西は笑顔を見せる。

そして今回の取材では、ミライト・ワンの西日本土木部に所属する、入社3年目の期待の技術者・武山英正にも話を聞いた。これまで無電柱化工事に補佐の立場で携わったことのある彼は、そのやりがいをこんなふうに語ってくれた。

「私は普段はNTTの通信地下設備工事の監理業務が中心なのですが、その場合自分の仕事の結果を見てくれるのは、元請けのお客様だけなんですね。一般の方には、工事が終わってもどこがどう変わったのかはなかなか分かりませんから。それが無電柱化の工事では、変わった点が一般の方にもはっきりと分かり、感謝の言葉や『良かった』という声を直接聞くことができます。それはとてもうれしいことですし、仕事のやりがいにつながります。そうした無電柱化工事に、これからもっと携わることができたらいいなと思います」

景観対策はもとより、災害に強い街づくりのためにもいっそうの推進が期待される無電柱化工事。実は世界的に見ても、ロンドンやパリは既に無電柱化率がほぼ100%であるのに対し、日本の場合は東京23区が8%、大阪市は6%程度と非常に低い。都市インフラ整備の重要な一つとして必要性の高まる工事だけに、これからの日本の土木技術を担う若い人材に、ぜひ関心を高めてもらいたいと願っている。

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